タイトル |
2型糖尿病モデルマウスに対するソバスプラウトの効果 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2008~2009 |
研究担当者 |
渡辺 満
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発行年度 |
2010 |
要約 |
ソバスプラウト(BS)を2型糖尿病モデルマウスに摂食させると、血漿・肝臓コレステロールの低下等脂質代謝を改善し生体内過酸化脂質の増加を抑制する。脂質代謝の改善にはBS摂取による肝臓での胆汁酸合成促進、糞への胆汁酸排泄が寄与している。
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キーワード |
ソバスプラウト、糖尿病モデルマウス、脂質代謝改善、酸化ストレス抑制
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背景・ねらい |
近年メタボリックシンドロームの患者数が増加しており、中でも糖尿病患者数の増加は著しい。糖尿病は同時に複数の合併症を発症する場合も多く、今後一層の医療費増加の要因として問題視されている。また各種スプラウトは安全面でメリットがあり、ビタミンなど栄養成分が豊富なことから機能性が期待できる食材として広く受けいれられている。特にソバスプラウトはフラボノイド含量が多いことから、生体内機能が期待される食材である。そこで本研究では、ソバスプラウトを糖尿病モデルマウスに摂食させた場合の効果を、種々の糖尿病パラメータ測定により明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- AIN-93G飼料をベースに、ソバ(階上早生)スプラウトで5%(w/w)あるいは10%置換した飼料を2型糖尿病モデルマウス(db/db)(7週齢、雄)に3週間摂食させる。その結果、カゼイン食(AIN-93G)を摂食させた糖尿病マウス(DC)群と比較して10%スプラウト食(DSH)群で体重の上昇が抑制され、肝臓重量は5%スプラウト食(DSL)群、DSH群で抑制される(表1)。他に動物群として、正常マウスのカゼイン食(NC)群、10%ソバスプラウト食(NS)群(いずれもdb/+mマウス)を設定する。
- 血液の糖化ヘモグロビン濃度(HbA1c)、血漿の総コレステロール量及び動脈硬化指数((総コレステロール-HDLコレステロ-ル)/HDLコレステロール))、肝臓の総コレステロールがスプラウト摂食により濃度依存的に低下する。肝臓トリグリセリドは、スプラウト摂食により有意に低下する(表2)。
- 肝臓でコレステロールから合成される胆汁酸の糞への排泄量は、DSH群でDC群と比較して有意に増加し、DSL群では増加傾向となる(図1A)。肝臓の脂質代謝酵素の中で、コレステロール7-α水酸化酵素(CYP7A1)の遺伝子発現がスプラウト摂食群で有意に増加する(図1B)。以上から、スプラウトによる脂質代謝改善には、胆汁酸の合成促進および糞への胆汁酸排泄が寄与している。
- 脂質過酸化度(TBARS)は、血漿ではDSL群で抑制傾向にあるが、DSH群では有意に抑制される。肝臓ではDSL、DSH群ともにTBARSは抑制される(図2A,B)。従って、ソバスプラウトの摂食で生体内酸化ストレス亢進抑制が期待できる。
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成果の活用面・留意点 |
- ソバスプラウトを機能性食品素材として利用する際の知見となる。
- 本試験で使用したソバスプラウトのフラボノイド含量は4850mg/100g乾燥重。
- ソバスプラウト添加飼料は、タンパク質、食物繊維量をカゼイン食と同一にするため、カゼイン、セルロースで調整している。飼料は自由摂食であり、正常マウス(NC、NS)間、糖尿病マウス(DC、DSL、DSH)間では摂食量に有意差は無い。
- 本試験の効果はヒトでの確認はされていない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
乾燥
機能性
機能性食品
そば
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