タイトル | 窒素・酸素安定同位体自然存在比を用いた地下水中の硝酸イオンの起源推定と脱窒過程の評価 |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
中島泰弘 尾坂兼一 江口定夫 加藤英孝 藤原英司 松森堅治 |
発行年度 | 2010 |
要約 | 脱窒による硝酸イオンの窒素と酸素の同位体濃縮係数の精度の高い推定に成功し、これに基づいて、硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体自然存在比の測定から、農業集水域における地下水中の硝酸イオンの起源と脱窒の進行程度を同時に明らかにしました。 |
背景・ねらい | 流域内での硝酸イオンの起源や形態変化の解明には、これまで窒素安定同位体自然存在比(δ15N-NO3-)を用いた手法がよく使われてきましたが、δ15N-NO3-値は起源によって異なるだけでなく、脱窒などの形態変化によっても変化するため、起源と形態変化を同時に明らかにするのは困難でした。そこで、農業集水域における地下水中の硝酸イオンの起源と脱窒の進行程度を同時に明らかにするために、硝酸イオンの濃度とδ15N-NO3-に加えて酸素安定同位体比(δ18O-NO3-)も同時に測定し、評価を行いました。 |
成果の内容・特徴 | 硝酸イオンの安定同位体自然存在比(δ15N-NO3-およびδ18O-NO3-)は起源によって異なる値をとると同時に、脱窒による濃度減少にしたがってレイリー・モデルで表される関係を保ちながら上昇することが知られています(表1)。なお、δ15N-NO3-およびδ18O-NO3-は、脱窒菌法(Casciotti et al., 2002)を用いることにより、従来よりも微量の試料について測定が可能です。 土壌カラムを用いた培養実験では、土壌溶液中の硝酸イオン濃度の対数とδ15N-NO3-およびδ18O-NO3-の間に直線関係がありました(図1a、b)。この変化はいずれもレイリー・モデルと合致し、脱窒による同位体比の変化が確認されました。これらの傾きから、脱窒による窒素および酸素の同位体濃縮係数(ε)を世界で初めて精度よく求めることに成功しました(図1a、b)。これにより、脱窒による窒素・酸素安定同位体比の増加比(Δδ18O-NO3-/Δδ15N-NO3-=18ε/15ε)が精度良く求められました(図1c)。 台地畑-谷津田連鎖系の地下水調査(図2)では、流域上部の畑地のδ18O-NO3-は硝化由来の硝酸イオンのδ18O-NO3-に近い値をとっていることから、脱窒があまり起こっておらず、結果として流域上部の畑地のδ15N-NO3-は起源の異なる硝酸イオンの同位体比を反映していると考えられます。また、化学肥料を起源とする硝酸イオンのδ15N-NO3-とδ18O-NO3-は直線的に変化しており、流域上部の畑地から下部の谷津田へと至る過程で脱窒を受けていることが確認されました。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | 肥料 |