タイトル | 抗体・プロテインチップを用いたヒラメの健康管理技術の開発 |
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担当機関 | (独)水産総合研究センター 養殖研究所 |
研究期間 | 2007~2009 |
研究担当者 |
中易千早 松山知正 坂井貴光 釜石 隆 乙竹 充 三吉泰之 福田 穣 倉田 修 |
発行年度 | 2010 |
要約 | ヒラメは主要な養殖魚であるが、魚病被害が多く、健康状態の把握による感染症監視技術の確立が求められている。そこで、「抗体・プロテインチップ」を応用した診断ツールの開発を試みた。感染で量的変動を示す血液中の生体成分を検出する抗体を作製し、チップ化した。また、病原体の抗原を特定し、人工的に合成した病原体マーカーをチップ化した。これにより、ヒラメの感染症診断が可能になった。 |
背景・ねらい | ヒラメは主要な養殖魚ですが、魚病被害が多く養殖経営を圧迫しています。さらに、食品への安心・安全への関心が高まり、抗菌性物質等の薬剤に依存しない養殖生産が期待されています。魚病被害を軽減し、薬剤の使用を減少させるには、養殖魚の健康状態を把握することが重要で、健康診断及び魚病の早期診断技術を確立することが生産者から強く求められています。 |
成果の内容・特徴 | ヒラメの感染状態を検出する「抗体チップ」、「プロテインチップ」の開発を行ないました。魚病診断への応用は初の試みです。「抗体チップ」は基盤の上に、病気になった魚の血液中に放出されたタンパク質に特異的に結合する抗体が並べられています。ヒラメから採取した血漿を専用の試薬とともに抗体チップと反応させて、蛍光スキャナーという機器で読み取ります(図1)。各抗体の発色パターンから、バイオマーカーの量の変動が検出され、「ウイルス感染」あるいは「細菌感染」が起きているかを診断でき、その感染の進行度合も推測することができます(図2)。「プロテインチップ」は小さなシートで、その上には、病原体の数種のタンパク質が並べられており、魚の血液中の各病原体に対する抗体を検出することができます(図3)。つまり、ヒラメが感染した病気の種類を判定することができるのです。魚の血漿を専用の試薬とともにプロテインチップと反応させると、感染した病気の種類に応じて白色だったチップの上に発色が現れます。今回開発されたプロテインチップでは、ヒラメに大きな被害を及ぼすエドワジエラ症、レンサ球菌症とVHSウイルス症を検出することができます。図4のように、エドワジエラ症に感染させたヒラメでは左側に、レンサ球菌症に感染させたヒラメでは右側に発色が現れて、それぞれの病気が正しく診断されます。 |
成果の活用面・留意点 | ヒラメを生かしたまま少量の血液を採取し、チップに反応させることで、病気感染の兆候や病原体の感染履歴を短時間で診断することが可能になりました。これにより、病気の蔓延防止、被害軽減への効果が期待されます。今後、この診断技術の簡略化を検討していく予定です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 管理技術 経営管理 診断技術 薬剤 |