針葉樹11種の温暖化に対する脆弱性の評価

タイトル 針葉樹11種の温暖化に対する脆弱性の評価
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 田中 信行
中園 悦子
津山 幾太郎
堀川真弘
松井 哲哉
発行年度 2010
要約 日本に分布する針葉樹11種について、温暖化が生育地に与える影響を予測し、温暖化に対して脆弱な種と地域を明らかにしました。
背景・ねらい 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第四次報告書(2007)によると、今世紀末には地球の温度は1.8~4.0℃上昇し、生態系や生物の生息域などに大きな影響を及ぼすことが予測されています。このような大きな気候の変化に、日本の自然林はうまく適応できるのでしょうか。自然林の構成樹種は現在の気候に対応して分布していると考えられますが、温暖化によって自然林の存続が危惧される地域をあらかじめ予測できれば、早めに対策(適応策)を立てることができます。このような目的から、日本の自然林の構成樹種で、暖温帯から亜寒帯、高山帯まで異なる分布域をもつ針葉樹11種について、現在の分布を気候要因と関係づける統計モデルを作成し、そのモデルに気候変化シナリオを組み込んで将来の生育域を予測しました。
成果の内容・特徴

予測の方法

予測の対象とする樹種は、北海道以北に分布するトドマツと本州以南に分布するシラビソ、イヌマキなどの9種および本州以北に分布するハイマツとしました。各樹種の分布データと現在の気候(気象庁, 1996)から算出した4つの気候変数(暖かさの指数*、最寒月の日最低気温の平均値、夏期(5~9月)降水量、冬期(12~3月)降水量)を用いて、分布を気候変数から予測する分類樹モデルを作成し、このモデルに現在の気候(気象庁, 1996)と2つの気候変化シナリオ(RCM20*、MIROC*)を組み込んで、各樹種の現在の適域(分布確率が予測精度を最大とする閾値以上の地域)を推定するとともに、将来(2081-2100年)の適域を予測しました。ただし、ハイマツでは、冬期降水量の代わりに最大積雪量と冬期雨量を用いました。

適域の変化

樹木の移動は種子の散布範囲に限られるため、温暖化にともなう樹種の分布の移動は、温暖化による気候帯の移動よりも著しく遅いと考えられます。また、人工林化や土地開発、海などの地形的要因による自然林の分断化が、さらに樹木の移動を困難にしています。そのため、100年程度では気候が変化しても樹種の分布はほとんど移動しないと仮定すると、温暖化後の樹種毎の適域の面積は、本州以北でハイマツが15~25%に減少するとともに、北海道でトドマツが18~52%に、本州以南では亜寒帯樹種のオオシラビソ・シラビソ・コメツガが0~18%に、冷温帯樹種のウラジロモミが2~18%に、中間温帯樹種のモミ・ツガが9~68%に減少することが予測されました。一方、暖温帯(一部亜熱帯)樹種のイヌマキ・ナギの適域は86~100%が残存すること、また暖~冷温帯性の稀少種トガサワラは0~1%にまで減少すると予測されました。

温暖化に対して脆弱な樹種と地域

11種のうち高山帯樹種のハイマツや亜寒帯樹種のオオシラビソ・シラビソ・コメツガ、冷温帯樹種のウラジロモミ、稀少種のトガサワラの計6種は、適域が全体的に減少するだけでなく、一部の地域からはほとんど消失すると予測されます。これらの樹種は、国立公園などの保護区に指定されている山岳地に現在多く分布しています。温暖化後に残る適域(逃避地)は、ハイマツ、オオシラビソ・シラビソ・ウラジロモミ・コメツガが中部山岳地域ですので、この地域の森林の保全が温暖化後の種や生態系の維持に重要と考えられます。また、トガサワラの実際の分布域は紀伊半島、四国であり、これらの地域では温暖化後に適域が殆どなくなってしまうことから、将来、絶滅を回避するために何らかの対策が必要になると考えられます。

詳しくは、次の論文をご覧ください。
田中信行・中園悦子・津山幾太郎・松井哲哉 (2009) 温暖化の日本産針葉樹 10 種の潜在生育域への影響の予測 . 地球環境 , 14(2), 153-164.
Horikawa, M., I. Tsuyama, T. Matsui, Y. Kominami and N. Tanaka (2009) Assessing the potential impacts of climate change on the alpine habitat suitability of Japanese stone pine (Pinus pumila). Landscape Ecology, 24: 115–128.

*暖かさの指数
植物の生育期間の熱量を表し、森林帯の分布と関係があります。
*RCM20
日本で開発された気候変化シナリオで、2081~2100年の平均気温は現在気候に比べ2.8℃上昇します。
*MIROC
日本で開発された気候変化シナリオで、2081~2100年の平均気温は現在気候に比べ4.3℃上昇します。
図表1 235184-1.gif
カテゴリ 亜熱帯

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