荒廃地などの早期緑化に貢献する「菌根形成・管理マニュアル」を作成

タイトル 荒廃地などの早期緑化に貢献する「菌根形成・管理マニュアル」を作成
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 赤間 慶子
山中 高史
発行年度 2010
要約 災害跡地などの植生の回復に、菌根菌を感染させた樹木苗を活用するため、菌根菌の採集から、菌の分離、樹木苗への接種方法について、マニュアルにまとめました。
背景・ねらい 野外で生育する樹木の細根には、植物の成長を助ける菌が根を覆うように感染して「菌根」(図1)を作ります。菌根を形成する菌は菌根菌と呼ばれ、土壌中に普通に存在しています。しかし、自然災害などの影響を受けて土壌中の菌根菌が消失している場合には、早期緑化のために植栽した苗に菌根が形成されず、苗の生育や定着が不良になるなどの問題が生じる場合があります。そのとき人為的に菌根菌を感染させた苗を用いれば、植物の生育を画期的に向上させることが可能です(図2)。そこで、菌根形成苗を植生回復事業に活用することを目的に、現場から菌根菌を採集し、分離する方法から樹木に接種して菌根を形成させるまでを説明するためのマニュアルを作成しました(図3)。
成果の内容・特徴

樹種と菌根菌の選択

荒廃地などの植生回復においては、はじめにどのような樹木と菌根菌を使うかを決めます。樹木については、その場所にもともと育っている樹木を用いるため、過去のデータから、または実際に現地で植生を調べます。細根の表面を覆うタイプの菌根菌は、マツ科、ブナ科、カバノキ科などの樹木に形成されるので、これらの樹木を選択します。
次に、菌根菌の種を決めます。菌根菌にはキノコを発生させる種が多く、森林の遷移段階の早い時期から発生する菌が植生回復に適しています。コツブタケ、ツチグリ、キツネタケ属菌、ニセショウロ属菌、またマツを用いた海岸林の場合にはショウロやヌメリイグチ属菌がこれらに相当します。このようにして選択した樹木と菌によって、菌根苗を作成します(図4)。

菌根菌の接種と培養

菌根苗は、種子を発芽させて得た苗に、野外に発生したキノコから分離した菌を接種して作成します。
以上のように、樹種と菌根菌の選択から、現場からの菌の分離と培養、樹木苗へ接種して菌根を形成させるまでの手法をとりまとめて、「菌根形成・管理マニュアル」 を作成し、森林総合研究所のホームページで公開しています(http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/2nd-chuukiseika15.html)。
これまで我が国においては、鹿児島県桜島や長崎県雲仙普賢岳、東京都三宅島などの火山噴火被災地で菌根菌感染苗の植栽試験(図5)が行われ、桜島では菌根菌の感染により苗木の生残率が約1.3倍高くなりました。また滋賀県田上山の斜面崩壊地では、菌根菌の感染によって苗木の成長が1.7~2.4倍程度向上しました。このようにそれぞれの地域で発生したキノコから分離した菌と樹木を活用して、森林の再生や植生の回復を早期に達成することは、防災上だけでなく地域の生物相を保全する上でも重要です。

本成果は、一般研究費「林地斜面・渓畔域の安定・緑化管理技術の開発」による成果です。
図表1 235192-1.png
図表2 235192-2.png
図表3 235192-3.png
図表4 235192-4.png
図表5 235192-5.png
カテゴリ 管理技術

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる