| タイトル | ナラ枯れの被害を予測し、早めに叩く |
|---|---|
| 担当機関 | (独)森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
牧野 俊一 所 雅彦 加賀谷 悦子 衣浦 晴生 近藤 洋史 山中 武彦 布川耕市 大橋 章博 斉藤 正一 岡田 充弘 福井 修二 加藤 徹 在原 登志男 蛭田 利秀 壽田 智久 永田 健二 猪野 正明 鶴田 英人 |
| 発行年度 | 2011 |
| 要約 | 日本の広葉樹林に大きな被害を与えているナラ枯れ。その被害地を前年に予測し、病原菌の運び屋カシノナガキクイムシをつかまえる「おとり木トラップ」を設置し早期に被害を防除するシステムを開発しました。 |
| 背景・ねらい | 日本各地の広葉樹林で猛威をふるっているナラ枯れ(図1)は「ナラ菌」と呼ばれる病原菌が原因です。この病原菌を運ぶのがカシノナガキクイムシという昆虫です。集合フェロモン*と木から出る揮発成分を組み合わせてこの虫を大量におびき寄せ、殺菌処理で枯れにくくした木に誘導し自滅させる「おとり木トラップ法」を開発しました。また、被害を受けやすいミズナラやコナラの分布をもとに、過去の被害やカシノナガキクイムシの移動能力のデータを交えて、翌年の被害予測場所を地図に表す方法を作り上げました。こうした新しい防除法と予測技術とを組み合わせることで、一本一本の樹木ではなく、ある面積の林全体を守るためのシステムを作り上げました。 *集合フェロモン 同種の個体を集める働きを持つ情報化学物質のこと。カシノナガキクイムシの場合、木の防御に打ち勝つために集団で攻撃した方が有利であり、そのために集合フェロモンで仲間を集めると考えられている。 |
| 成果の内容・特徴 | おとり木トラップ法カシノナガキクイムシは集合フェロモンを使って仲間を呼び集め、特定の樹に集中攻撃を行います。攻撃された木は病原菌によって枯れますが、あらかじめ殺菌剤を樹に注入しておけば、枯死をかなり予防できるうえ、木に潜ったカシノナガキクイムシの多くも繁殖に失敗してしまいます。集合フェロモンの誘引力は、木から出る匂いと組み合わせることで飛躍的に強くなります。そこで人工的に合成した集合フェロモンと木から出る揮発性成分とを組み合わせ、これを使って、殺菌処理した「おとり木」にカシノナガキクイムシを大量におびき寄せて捕殺する「おとり木トラップ法」を開発しました。この方法は、殺虫剤を一切使わない上に、木はあまり枯れず、穿入したカシノナガキクイムシだけが木の中で死ぬことから、伐倒などの後の処理も不要であることなど様々な点で優れています。まだ被害本数が少ない初期段階であれば、0.1haあたり数万頭のカシノナガキクイムシを捕殺し、無処理の場合に比べて被害本数を1割程度までに減らすことが可能です(図2)。被害の予測おとり木トラップ法などによってナラ枯れ被害を減らすためには、限られた予算や人材を効率よく使わなければなりません。「今年はどの辺に被害が出そうか?」を事前に予測できれば、対策は大変立てやすくなります。そのため、ナラ枯れによって枯れやすいミズナラやコナラの分布、DNAを用いたカシノナガキクイムシの移動の推定、また過去の被害の分析など、様々なデータを総合することによって、被害を予測するモデルを作りました。これによって、ある場所で翌年被害が起きる確率を計算することができるようになりました。過去のデータを用いて予測の適中率を試算したところ、80-90%となりました。つまり、ある年に被害の発生した場所の8~9割は、その前年のデータから予測できることになります。 ナラ枯れハザードマップハザードマップというのは、いろいろな災害や事故の起きやすさを地図上にわかりやすく表したものです。各地で防除対策を練る場合、ナラ枯れのハザードマップがあれば、たいへん役に立ちます。上で述べた被害予測モデルを使えば、ある年の被害の出方から翌年の被害を地図上に表すことができるのです(図3)。被害の確率が高い所に、おとり木トラップ等による防除を集中的に行うことで、効率的な防除が可能となるでしょう。詳しくはパンフレット「ナラ枯れに立ち向かう」をご覧ください(http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/2nd-chukiseika19.pdf)。 本研究は、農林水産技術会議先端技術を活用した農林水産研究高度化事業「ナラ類集団枯死被害防止技術と評価法の開発」ならびに同新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業「ナラ類集団枯損の予測手法と環境低負荷型防除システムの開発」の成果です。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| 図表3 | ![]() |
| カテゴリ | 病害虫 繁殖性改善 評価法 フェロモン 防除 |
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