森はよみがえったか? ―御岳山崩れ25年の軌跡―

タイトル 森はよみがえったか? ―御岳山崩れ25年の軌跡―
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 柴田 銃江
正木 隆
田中 浩
壁谷 大介
斎藤 智之
西山 嘉彦
中静 透
発行年度 2011
要約 1984年に起きた長野県西部地震による山崩れ跡地で植生遷移の過程を長期継続観測し、大規模災害のあとにどのように森林が回復するかを明らかにしました。
背景・ねらい 地震や噴火、土石流などの大規模災害後の山間地域を管理する上で、被害跡地での森林回復に関する情報は重要です。そのため、1984年の長野県御岳山の山崩れ跡地で継続的に植生遷移を調べています。これまでの観測から、森林植生の回復の速さには標高や表層土の残存が大きく関わること、回復工法としての人工播種には災害直後の土砂流出防止効果が期待できるものの、自然植生に対する影響が数十年続くことがわかりました。これらのことから、大規模災害後に森林を復旧させるには、標高帯や土壌条件による管理区分や、長期的な検証の体制を組込んだ森林回復工法の選択が必要です。
成果の内容・特徴

求められる大規模災害後の森林回復の情報

大きな地震や噴火、台風などの災害は、大規模な森林破壊を引き起こします。破壊された森林の植生回復には何年くらいかかるのか、回復の鍵になる要因は何か、回復工事は自然生態系に対してどのような影響があるか、などの情報は、被害にあった山間地域を管理してゆく上で必要ですが、大規模災害自体がめったにないため、その様な研究は非常に少ないのが現状です。
そうした中、長野県の「御岳山崩れ」の跡地は、大規模災害後の森林回復の様子を知る上で貴重な事例です。1984年の長野県西部地震によって発生した岩屑流(がんせつりゅう)*は、御岳山頂付近(約2500m) からふもと(約1000m)に至る森林を破壊しました。そこで、私たちは御岳山崩れの翌年から植生遷移を継続的に調査することで、大規模災害後の森林回復について検討しました(図1)。

御岳山における森林回復の実態

これまでの観測から、御岳山の森林回復には標高や表層土の残存状態が大きく関わっていることがわかってきました。例えば、植被率(地面が植物で覆われる割合)でみた場合、標高1100mでは、森林破壊の10年後にはほぼ100%に回復しました(図2の赤線)。それに対して、標高2000mでは25年たっても80%(図2の青線)、さらに同じ標高2000mでも表層土の堆積がない場所では40%にとどまっていました(図2の水色線)。また、樹木の回復の指標として、森林破壊から25年たった林分材積(それぞれの樹木の体積の合計値)をみた場合、標高1100mではハンノキ類やヤナギ類の旺盛な成長のおかげで、森林破壊前の15~270%まで回復しましたが、標高2000mでは0.5~7%にとどまっていました。
ところで、標高1600m付近では、土砂流出防止のための植被の早期回復工事として、外来種である牧草類の人工播種(種まき)が広域に行われました。この播種には、初期の植被率回復促進に対して一定の効果がみとめられましたが、在来植物の侵入・成長を遅らせていました。牧草類は播種から25年後にようやく減り始めたので、在来植物が回復するには早くても30年はかかりそうです。長期的に見ると、牧草の播種は、在来植生の回復には役立たないと考えられます。

成果の活用

以上のように、森林植生の回復には標高や表層土の残存が大きく関わること、牧草類の人工播種は初期の土砂流出防止効果が期待できる一方、自然植生に対する影響が数十年続くことがわかりました。これらの結果から、森林植生の回復には標高や土壌条件を考慮することが重要であり、また森林回復工法の選択には長期的な視野と検証が必要といえるでしょう。四半世紀におよぶこの植生遷移研究は、森林植物の分布要因や更新動態に関する学術的価値があるだけでなく、自然生態系に配慮しながら大規模災害後の森林管理手法を探る上で、重要な基礎情報として活用が期待されます。

*岩屑流
噴火や地震に伴う震動によって、大きく崩れた火山の山体が高速で斜面を一気に流れ下る現象。岩屑なだれとも呼ばれる。
図表1 235244-1.png
図表2 235244-2.png
カテゴリ 播種

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる