スギの材形成に関与する遺伝子の発現を網羅的に解析することが可能になりました

タイトル スギの材形成に関与する遺伝子の発現を網羅的に解析することが可能になりました
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 藤原 健
黒田 克史
渡辺 敦史
井城 泰一
発行年度 2012
要約 スギの材形成時に発現している遺伝子を約1万8千収集し、これらの塩基配列情報を集積したマイクロアレイチップを作製したことにより、木部形成時における遺伝子発現を網羅的に解析することが可能となりました。
背景・ねらい スギ樹幹において材形成に関与する遺伝子に関する研究基盤を構築することを目的に、スギ形成層帯及び分化中木部周辺で発現しているRNAを抽出し、遺伝子を収集しました。年間を通じて試料を採取することにより、成長期に約5万5千、休止期に約6万8千のEST*を収集しました。これらの情報に基づいて選択した約2万を基板上に配置したマイクロアレイ*を作製しました。このマイクロアレイは集積した約2万の遺伝子の発現量を一度に解析できます。マイクロアレイを用いて時期による遺伝子発現の変化を解析しました。形成層帯周辺で発現している遺伝子は、成長開始期に高発現するものや成長期前期や中期に高発現するものなど4つのパターンに分けられました。

*EST(Expressed Sequence Tag)
遺伝子等の目印となる短い塩基配列。
*マイクロアレイ
ガラス基板上に遺伝子等のDNA配列を数万から100万種類程度配置し、細胞から単離したRNAを逆転写したcDNAをその基板上で結合させることで、その細胞で発現するESTを網羅的に解析する手法。(cDNA:RNAの塩基配列を転写したDNA)
成果の内容・特徴

背景と目的

スギ材を特徴付けるさまざまな性質は遺伝的に支配されていることがこれまでの研究でわかってきています。そのため、遺伝子情報を分析することによって材質形成のメカニズムを明らかにすることが可能と考えられます。近年、スギを対象としたゲノムプロジェクトが進行しており、ゲノムの解読が進んでいます。また、花粉症対策を目的として雄花及び花粉形成に関連する遺伝子についてこれまでに多くの成果が得られています。その一方で、材の形成に関連する遺伝子の情報は限られたものでした。本研究では、スギ樹幹において発現する材形成に関与する遺伝子についての研究を進めていく上で不可欠な基盤を整備することを目的に、1年を通じてスギ樹幹から試料を採取することにより、材形成時に発現している遺伝子を網羅的に収集しました。

収集した遺伝子情報

初春の形成層活動が再開する時期から形成層活動が休止する秋季および休眠している冬季まで月に1~2回の割合で採取した試料からRNAを抽出し、塩基配列を解析しました。その結果、形成層の活動期(春~秋)については約5万5千のEST、形成層の休止期(冬)には約6万8千のESTを収集することができました。これらのうち約2万のESTを基板上に配置したマイクロアレイを作製しました(図1)。このマイクロアレイを用いることによって、スギ樹幹で発現している多種類の遺伝子の発現を同時に検出できるようになりました。

遺伝子発現の季節変化

マイクロアレイを使って遺伝子発現の季節変化を調べてみました。3月、4月、6月、8月、10月に試料を採取し、マイクロアレイで発現遺伝子を網羅的に調べました。また、同時に組織構造の顕微鏡観察も行いました。約2万種類の遺伝子の発現時期を解析した結果、成長期前期(4月)に高発現するもの、成長期中期(6月)に高発現するもの、晩材形成期(8月)に高発現するもの、成長再開時期(3月)及び成長期終期(10月)に高発現するもの、の4つのパターンに区分することができました(図2)。このパターンに対応した時期の形成中木部を顕微鏡観察した結果、4月には拡大中の早材仮道管の数が多く、6月には二次壁形成中の早材仮道管が最も多く、8月には分化中の仮道管が少なく、厚い二次壁を形成中の晩材仮道管が多いことがわかりました。未だ個々の遺伝子と木部形成との関係は明らかになっていませんが、時期による発現遺伝子の違いが木部形成に影響していることを示していると考えられます。

今後の発展

マイクロアレイを用いることによって、多くの遺伝子の中から個々の事象に影響する候補遺伝子を網羅的に探索することが可能となりました。材形成プロセスと連動した遺伝子発現プロファイルを構築することにより、林木を対象とした遺伝子解析のブレークスルーとなる可能性を秘めています。今後、スギにおける形質発現の仕組みを明らかにすることや材質に着目した優良種苗の早期選抜などに向けた取り組みを進めていきます。

研究資金と課題:森林総合研究所運営費交付金プロジェクト「スギ材形成のプロセスと対応する遺伝子発現プロファイルの構築」
図表1 235331-1.jpg
図表2 235331-2.jpg
研究内容 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p18-19.pdf
カテゴリ

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる