タイトル |
完全長cDNAを利用したオオムギゲノム上の遺伝子構造決定 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2011~2012 |
研究担当者 |
田中 剛
松本 隆
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発行年度 |
2012 |
要約 |
オオムギの完全長cDNA塩基配列情報を利用して、オオムギゲノムに存在する26,159遺伝子の構造を決定した。本情報は、農業上有用な遺伝子の同定を可能にし、オオムギの品種改良に役立つ。
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キーワード |
オオムギ、ゲノム解読、完全長cDNA、アノテーション
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背景・ねらい |
オオムギは世界中で年間1億3千万トンの生産量をもつ重要な穀物であり、今後の課題である人口増加による食糧問題を解決するために、多収性や環境ストレス耐性などを付与した画期的な新品種の開発が期待されている。遺伝子の塩基配列情報が明らかになれば、オオムギ遺伝子機能を推定することが可能になるため、品種開発の加速化が期待される。本研究では、国際コンソーシアムにより決定された約51億塩基のオオムギゲノム情報を利用しやすくするため、完全長cDNA情報を利用した正確な遺伝子構造決定を行い、他の転写産物情報と統合してオオムギ遺伝子セットを決定した。
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成果の内容・特徴 |
- 日本のオオムギ品種である「はるな二条」の完全長cDNA情報(28,621種類)について、重複するものを除いた23,343種類の代表配列を決定した(図1)。
- イネの遺伝子予測法を活用して、「はるな二条」の完全長cDNAをオオムギ品種「Morex」のゲノム配列情報に対応付けることにより、9,275遺伝子の構造を決定した(図1)。
- 得られた遺伝子構造と国際コンソーシアムによる解析から得られた転写産物配列情報(RNA-Seq)を比較し(図2)、79,379遺伝子の比較的正確な遺伝子構造を決定した。さらに、オオムギ近縁種のミナトカモジグサやイネ、ソルガム、モデル植物であるシロイヌナズナの遺伝子情報との比較から、高信頼度の26,159遺伝子を決定し、オオムギ遺伝子セットとした。
- オオムギとミナトカモジグサの同祖遺伝子に関してゲノム上における遺伝子の並びを比較し、遺伝子の位置の保存性と遺伝子の多様化や機能情報との関係を明らかにした。
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成果の活用面・留意点 |
- ゲノム上の正確な遺伝子情報は、オオムギが持つ遺伝子の単離や機能解明に役立つ。また、ゲノム配列が明らかになっている他生物の全遺伝子セットと比較が可能になったことで、他生物ですでに解明された遺伝子機能情報をオオムギの研究に応用することが可能になった。
- オオムギにおけるゲノム情報を利用した育種が可能となり、病害抵抗性や多収性等を目指した品種改良の進展に役立つ。
- オオムギの遺伝子情報はコムギを含むムギ類全体の有用遺伝子同定のための有効な研究基盤として利用できる。またオオムギの遺伝子情報は、現在進行中の6倍体であるコムギゲノムの解読において、遺伝子構造の決定に活用できる。
- アノテーションデータが閲覧可能なデータベースの開発などによる、オオムギゲノム情報の有効活用化を推進することが重要である。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h24/nias02402.html
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カテゴリ |
育種
大麦
新品種
ソルガム
多収性
データベース
病害抵抗性
品種
品種開発
品種改良
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