ブタの椎骨数遺伝子の単離と遺伝子診断を用いた枝肉生産技術

タイトル ブタの椎骨数遺伝子の単離と遺伝子診断を用いた枝肉生産技術
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2007~2012
研究担当者 美川 智
佐藤周史
林 武司
粟田 崇
新居雅宏
両角岳哉
吉岡 豪
今枝紀明
山口倫子
野口 剛
千代 豊
普川一雄
廣瀬健右
奥村直彦
発行年度 2012
要約 肉用に用いられているブタ品種の椎骨数を決めている新規遺伝子VRTNを単離した。VRTNの遺伝子診断を枝肉生産に用いることにより、肉量を増大させるだけでなく、肉質を制御することも可能となった。
キーワード ブタ、椎骨数、遺伝子診断、畜産
背景・ねらい ブタの椎骨数は体長と大きく関連し、産肉性や繁殖能力だけでなく、間接的には成長形質、脂肪形質にも影響すると考えられる。椎骨数には変異が認められ、イノシシでは19個であるが、改良品種では20個から23個へ増大している。この変異を決定している原因遺伝子を単離同定することにより、産肉性や肉質の改良に貢献することが期待されていた。本研究では、マップベースクローニングにより椎骨数の変異に関与する遺伝子の単離、ならびに遺伝子配列情報を利用した遺伝子診断技術の開発を目指した。
成果の内容・特徴
  1. 肉用豚品種において椎骨数のバラツキの原因である新規遺伝子VRTNを単離した。椎骨数増大型(Q)対立遺伝子にアミノ酸置換はないが、発現制御領域にQTLと関連する多型が認められた。またQ対立遺伝子の胚発生期での発現量は、野生型(wt)対立遺伝子より増大していた。1つのQ対立遺伝子には平均0.63個の椎骨数増大効果が認められた(図1、表1)。
  2. 椎骨数遺伝子VRTNの遺伝子診断法を開発した。多型部位に特異的なプライマー(特開2011-193826の表8に記載)を用いることにより、一般的なPCRの後、アガロース電気泳動を行うことで正確かつ簡便に対立遺伝子型を判定できた。制限酵素処理などを必要とせず、Qおよびwt対立遺伝子に特異的なそれぞれ4本のバンドが検出された(図1)。
  3. 椎骨数遺伝子VRTNがQ/Q型の個体では、ロース長が増大し、ロース断面積が若干小さくなったものの、ロース・バラ肉量は増大した。ロース肉の粗脂肪含量は増大し、クッキングロスが低下(保水性が向上)した。また硬さの指標であるシェアバリューは小さくなり、やわらかくなった(表2)。
  4. 種雄豚の遺伝子診断を用いた生産農場での大規模実証試験では、Q/Q型の人工授精用精液を用いた枝肉生産において、ロース長が増大するとともに、粗脂肪含量が高く、シェアバリューが小さくなった。またQ/Q型およびwt/Q型の人工授精用精液を用いた場合に、市場での格付け成績が向上した(図2)。wt/wt型の人工授精用精液を用いた場合には、背脂肪の過剰蓄積による格落ちが多かった。
成果の活用面・留意点
  1. 種雄豚あるいは人工授精用精液のVRTN遺伝子型を揃えることで、枝肉の均一性および市場価値が向上した。長期的には母豚のVRTN遺伝子型についても考慮することで、さらなる向上が期待される。
  2. ロース芯面積を大きくするため、またロース肉の粗脂肪含量を低下させるためなど、目的に応じて、VRTN遺伝子型が野生型の種豚の利用も可能である。
  3. VRTN遺伝子が増大型であることで、粗脂肪含量が増え、シェアバリューが小さくなる理由については明らかでない。筋繊維の太さやタイプなど解剖学的な研究が今後必要である。
図表1 235366-1.jpg
図表2 235366-2.gif
図表3 235366-3.gif
図表4 235366-4.gif
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h24/nias02410.html
カテゴリ 診断技術 ばら 繁殖性改善 品種

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