大豆の直接取引の効果と推進上の留意点

タイトル 大豆の直接取引の効果と推進上の留意点
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2009~2011
研究担当者 田口光弘
平野信之
高橋明広
発行年度 2011
要約 大豆の直接取引は、生産者、実需者の双方に価格面のメリットがあるが、それには、輸送、保管、選別、代金決済などの問屋機能を代替できるよう、低温倉庫等を保有する大規模経営が差別化可能な大豆を生産し、定期的に輸送、代金回収を行うことが有効である。
キーワード 大豆の直接取引、実需者ニーズ、問屋機能
背景・ねらい 戸別所得補償制度の下では、産地銘柄品種であることを前提に、(1)播種前契約を結ぶ、(2)農産物検査を受けるという2つの要件を満たせば、実需者へ直接出荷・販売したとしても、農業者は大豆作に関する助成金を受給できる。そのため、従来は直接取引において農業が受給可能な取引価格の下限は「生産物の代金+大豆交付金」であったが、現在では「生産物の代金」が下限となり、直接取引に取り組むための障壁は低くなっている。しかし、直接取引に取り組む事例は少なく、その実態は十分解明されていない。そのため、大豆の直接取引に取り組む先行事例の分析から、農業者が実需者と取引を行う上での留意点を摘出する。
成果の内容・特徴
  1. 大豆の直接取引を行う事例には、(1)交付金制度下で制度にのらない直接取引を行う(N社、生産者組織S)、(2)交付金制度下で生産物のみ直接実需者に届ける(G営農組合、O経営(2002年時点))があり、さらに近年は(3)戸別所得補償制度等の下で助成金を得ながら実需者に直接販売を行う(H営農組合、O経営(2012年時点)) があるが、いずれも、生産物(大豆)は、直接生産者から実需者に届けられる仕組みとなっている(表1)。
  2. 直接取引の事例においては、農薬の使用を極力控える、在来種大豆を栽培するといった、実需者のニーズへの対応がなされている(表1)。
  3. 取引価格は、直接相対で決める場合と入札価格に連動する場合があり、また、金額も6,000~24,000円/60kgとかなり差がある。直接取引により、生産者は、JA等に出荷した場合の価格よりも2,280~6,376円/60kg高く販売できており、さらに、戸別所得補償制度の下では畑作物への交付金が加わることで、大豆作収入は60kg当たり2万円を超える(表1)。
  4. 実需者においても、落札価格+契約栽培に伴うプレミアム+特栽プレミアム+卸手数料の合計より割安な価格で国産大豆の調達が可能となり(表1)、原料大豆の生産者や栽培方法を消費者にアピールできる。
  5. 直接取引は、生産者、実需者の双方に価格面のメリットがあるが、それが発揮されるには、輸送、保管、選別、代金決済などの問屋機能が必要である。N社、O社の事例ともトラックを持つ生産者が輸送を行い、O社では、自社の低温倉庫に保管している。また、代金決済も数度に分けたり、配達時に代金を得ることで、リスク回避を図っている。(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 直接取引においては、在来種大豆などを用いる場合も多いが、一定の栽培面積がないと戸別所得補償制度の対象とならない場合があるので、事前に確認した上で取り組む必要がある。
図表1 235545-1.gif
図表2 235545-2.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2011/114b0_10_04.html
カテゴリ 病害虫 経営管理 出荷調整 大規模経営 大豆 農薬 播種 品種 輸送

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