タイトル |
細胞障害率によるリンゴわい性台木の耐凍性の評価 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2007~2011 |
研究担当者 |
守谷友紀
工藤和典
岩波 宏
本多親子
和田雅人
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発行年度 |
2011 |
要約 |
リンゴわい性台木の樹皮の凍結処理において、台木部の細胞障害率には品種間差異がみられる。細胞障害率は高い方からM.9、JM7、M.26となり、JM7の耐凍性はM.9台木より高く、M.26台木より低い。
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キーワード |
リンゴ、わい性台木、耐凍性、細胞障害率
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背景・ねらい |
日本におけるリンゴのわい化栽培にはイギリスから導入されたわい性台木M.26およびM.9が使用されてきたが、近年、果樹研究所で育成したわい性台木JM7の利用面積が増加している。M.9台木利用樹については、年によっては発芽不良や枯死などの凍害症状が報告されている。一方、JM7台木利用樹についても、一部園地で樹勢衰弱症状が報告され、凍害の影響が指摘されている。そこで、樹木の耐凍性測定方法として用いられているイオン漏出量に基づく細胞障害率測定により、JM7、M.9、M.26台木の耐凍性を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 1年生苗の穂木部および台木部から調整した樹皮(師部および形成層を含む)試料を凍結処理する(図1)。庫内温度-3℃で20分間放置した後に植氷し、さらに-3℃で1時間凍結させてから、-3℃/時間の速度で冷却する。各温度になった時点で測定試料を回収する。非凍結処理は4℃保存、完全凍結処理は液体窒素による凍結融解を3回行う。
- 4℃で一晩保存した全試料の導電率を測定した後、全試料を煮沸処理し、再び導電率を測定する。以下の式により細胞障害率を算出する(図1)。
細胞障害率(%)=(Z-X)/(Y-X)×100 X=(非凍結処理試料の導電率)/(煮沸処理した非凍結処理試料の導電率) Y=(完全凍結試料の導電率)/(煮沸処理した完全凍結試料の導電率) Z=(測定試料の導電率)/(煮沸処理した測定試料の導電率) - JM7、M.9、M.26台木に接ぎ木した「みしまふじ」1年生苗から調整した試料を凍結処理し、イオン漏出量から細胞障害率を測定した結果、-10℃以下で台木品種間差異が見られる(図2)。穂木部ではM.9台木苗の細胞障害率が高い傾向にある。台木部ではJM7台木苗の細胞障害率がM.9台木苗より低く、M.26台木苗よりも高い。
- 細胞障害率から、JM7の耐凍性はM.9台木より高く、M.26台木より低いと判断され、従来の知見と一致する。
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成果の活用面・留意点 |
- JM7、M.9、M.26台木以外の台木品種でも、細胞障害率の測定により耐凍性を評価できる。ただし、耐凍性評価対象の台木品種だけでなく、同じ条件下にある耐凍性が既知の台木品種も測定し、結果の比較により耐凍性を評価する必要がある。
- この方法により穂木品種の耐凍性も評価できるが、台木品種の影響を受ける可能性があるため、台木品種を同じくする樹で比較する必要がある。
- この試験においては、4℃で冷蔵保存していた休眠状態の苗木を15℃条件に1週間おいてデハードニングさせた後に凍結処理を行っている。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2011/142e0_10_11.html
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カテゴリ |
台木
接ぎ木
凍害
発芽不良
品種
りんご
わい化
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