タイトル |
集落を越える農村協働力による資源保全活動の促進 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2009~2011 |
研究担当者 |
遠藤和子
福与徳文
唐崎卓也
芦田敏文
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発行年度 |
2011 |
要約 |
事業導入など適度なインパクトを繰り返し受けることにより個人の創発的なネットワーク形成が進むと、集落を越える範囲で農村協働力が育まれることになり、その結果、農地・水・環境保全向上対策などの資源保全活動の展開が促される。
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キーワード |
農村協働力、創発的ネットワーク、集落を越える、資源保全活動
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背景・ねらい |
農地・水・環境保全向上対策など農村の資源保全活動をうまく発展させていくために農村協働力の形成と発揮に期待が寄せられている。農村協働力は、集落に帰属する集団財として捉えられることが多いが、活動が展開していくためには、個人の創発的ネットワーク形成に基づく農村協働力の把握と活動促進との関係に注目する必要がある。
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成果の内容・特徴 |
- 農地・水・環境保全向上対策の優良事例である三重県多気町勢和地区では、旧勢和村全10集落における資源保全活動を基礎としつつ、水土里ネット立梅用水が事務局となり、学校、図書館、農村レストラン、交流施設、ボランティア組織など多様な主体と連携する協議会を設置して活動を展開させている(図1)。とりわけ立梅用水の受益地ではない5集落を含む旧村内全10集落の参画が特徴となっている。
- 旧村内全10集落が資源保全活動に取り組むことにより次のような効果が表れている。(ア)10集落区長会が協議会に参画することを通じて、資源保全活動に関する有益な情報共有と集落間の切磋琢磨が実現している。(イ)各集落では、水路の清掃、草刈り、獣害ネット設置、耕作放棄地再生、花の植栽など独自の活動を展開している。これら活動を推進する区長らは多大な負担を負っているが、区長会における情報共有に加え村づくりに熱意をもつ人々で構成された協議会への参画を通じ情緒的サポートの獲得が可能となり、様々な労苦を乗り越えている(図1)。(ウ)各集落一人ずつ選出され構成される水土里サポート隊は、集落における水路の目地補修や農道整備のサポートを行っている。3年間で7,000mの補修が実施され、機能診断技術や補修技術が習得、蓄積されたことに加え、集落が自ら水路の維持管理を実践するという意識づけをもたらしている。
- 10集落全体への活動の広がりは、旧勢和村に広がる個人の創発的ネットワークが源泉となり、農地・水・環境保全向上対策導入を契機として生まれている。人々は、あじさい1万本運動などを契機に、もともと持っていた地縁的かつ閉鎖的なつながりを越え、創発的なネットワークを形成している(図2)。人々はネットワークに埋め込まれた資源(道具的/情緒的サポート)を活用しながら活動を展開させており、このようなネットワークとそこに埋め込まれた資源を農村協働力として捉えることができる。
- 個人の創発的ネットワークの蓄積を土台に育まれた農村協働力は、集落における水路の維持管理、獣害対策、耕作放棄地再生など資源保全活動の促進に加え、あじさいまつりや交流イベント開催、営農組合による転作大豆生産、農村レストランによる加工と学校給食への供給など、多彩な地域づくり活動にもつながっている(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 個人のネットワークを捉えることにより、集合財としては捉えることが困難であった農村協働力を把握することができる。
- 事例地区のような優良事例においても、創発的ネットワークが農村協働力を育み資源保全活動を促進するに至るまでおよそ15年を経過している。年数をかけた働きかけや評価が必要となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2011/411b0_10_09.html
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カテゴリ |
あじさい
加工
診断技術
大豆
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