タイトル |
大規模農地でも適用可能な土壌凍結深制御手法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2005~2011 |
研究担当者 |
廣田知良
臼木一英
林 正貴
根本 学
岩田幸良
柳井洋介
矢崎友嗣
井上 聡
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発行年度 |
2011 |
要約 |
地温・土壌凍結深モデルで推定した結果を基に、トラクター等で積雪深を変化させることで大規模農地でも土壌凍結深を予測しながら数cm以内の精度で制御できる。
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キーワード |
土壌凍結、環境制御、最適化、大規模農地、気候変動適応策
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背景・ねらい |
北海道・十勝地方は、近年、初冬の積雪深の増加時期の早期化により土壌凍結深が顕著な減少傾向にある。土壌凍結深が減少すると、春先の農作業の遅延や越冬作物の生育抑制、湿害等は軽減される一方で、収穫後、畑に残ったばれいしょが越冬して雑草化する野良生えの大発生(以下、野良イモと呼ぶ)や、また、融雪水の浸透量増加に伴う農地の肥料成分の溶脱による地下水汚染のリスク増大の可能性も指摘されている。そこで、これらの問題の解決のために土壌凍結を最適な深さに制御する手法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 土壌凍結深制御に際しては、予め制御の目標となる凍結深を設定する、あるいは制御の目標となる温度閾値を設定する(例えば野良イモの凍死温度-3℃など)。温度閾値を決めることで、これに地温の深さ分布から、目標とする温度閾値に到達している深度である閾値深さを示すことができる(図1)。
- 断熱作用のある雪の除去(除雪)により、土壌凍結は発達し、深さ0.2m以上の積雪により土壌凍結の発達が抑制される。気温と積雪深を入力値とする地温・土壌凍結深を推定する数値モデルによる除雪と積雪の時期と期間の調節で、最大凍結深を数cm以内の誤差で制御できる。土壌露出期間の気温は、日々の観測値ではなく期間の平滑化値あるいはこの値に±1℃の範囲の値を与えてもモデルは最大凍結深を数cm以内の誤差で推定できる(図2)。このことは、入力値として、観測値のみならず予測データを用いても凍結深の精度の良い予測・制御が可能なことを示す。
- 1.の対象とする凍結深、温度、深さの閾値の情報と2.の数値モデルを用いた積雪深の操作により最適な土壌凍結状態に制御できる。これを土壌凍結深制御と称する。
- トラクター等で除雪することによって土壌露出部と雪山部を交互に列条にする雪割りと呼ばれる作業は、結果的に凍結促進と抑制を同時に実施している(図3)。作業も短時間(1回1ha辺り30分以内)で終了し、土壌凍結深制御に適した合理的作業体系である。つまり、雪割りの作業時期や土壌露出期間を調節して実施することで、土壌凍結深制御は大規模農地で実現する。
- 土壌凍結深制御の適用条件は、目標となる凍結深、与えられた気象条件、温度閾値あるいは閾値深さで決まる。野良イモ防除の例では、凍死温度が-3℃とすると、深さ0.1mの野良イモの凍死には、十勝地方芽室の平年の気象条件では最寒期(1月中下旬)で、土壌凍結深制御のための除雪による土壌露出期間は10日を要する。温暖化シナリオでの21世紀末想定の気温(現在の平均+3℃)では、13日間の土壌露出期間となる(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本手法は、氷点下条件の地温・土壌凍結状態の影響を受ける土壌中の水・物質移動、土壌の物理性、微生物活動、温室効果ガスの排出、作物や雑草の生育等の農地生態系の制御や気候変動に対する適応策に応用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2011/210a3_10_03.html
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カテゴリ |
肥料
病害虫
環境制御
雑草
湿害
ばれいしょ
防除
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