タイトル | 世界で初めての微生物を用いた温室効果ガス・N2Oの削減法を野外で実証 |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
秋山博子 内田義崇 早津雅仁 星野(高田)裕子 多胡香奈子 下村有美 王 勇 森本 晶 南澤 究 板倉 学 |
発行年度 | 2012 |
要約 | 温室効果ガス・N2Oを除去する能力の高いダイズ根粒菌をダイズに接種することにより、ダイズ収穫後に根粒が土に帰る際に圃場から発生するN2Oを47%削減することができました。この結果は微生物を用いた世界初のN2O削減技術として注目されています。 |
背景・ねらい | N2O(一酸化二窒素)は二酸化炭素の約300倍の温室効果があり、オゾン層の破壊の原因物質でもあります。N2Oの最大の人為的発生源は農耕地であるため、その削減技術の開発は重要な課題となっています。現在までに、硝化抑制剤の使用や窒素施肥の削減などが提案されていますが、微生物を用いた方法はありませんでした。 |
成果の内容・特徴 | 東北大学の研究により、根粒菌の中にはN2Oを窒素ガス(N2)に還元する酵素(N2O還元酵素)の遺伝子(nosZ)を持つものと持たないものとがあることが明らかになっていました。また、nosZを持つ根粒菌によって形成される根粒がN2Oを除去することが報告されていました(図1)。しかしながら、実際の圃場におけるN2O削減効果は検証されていませんでした。このため、東北大で開発したN2O還元酵素活性を強化したダイズ根粒菌:nosZ強化株による圃場スケールでのN2O削減効果を実証しました。 最初に、nosZ強化株のN2O削減能力の評価と実証のために、目的の根粒菌が形成した根粒かどうかを確認するためのPCRによる検定法を開発し、さらに圃場での試験を行うための根粒菌の培養法と接種法を確立しました。これらを用いて、まず、自動的にN2Oの発生量を計測できるライシメーター実験施設で接種試験を行ったところ、nosZ活性を欠いた土着ダイズ根粒菌が大多数を占める黒ボク試験区では、nosZ強化株の接種により、収穫後に根粒が分解し土に帰る際に発生するN2Oを43%削減できることを確認しました。そこで、実際に黒ボク土圃場でnosZ強化株を用いた試験を実施した結果、収穫後の圃場からのN2Oの発生を47%削減できることを実証しました(図2、図3)。この成果は、世界で初めて微生物を用いたN2Oの削減が圃場規模で可能であることを実証したものであり、将来の実用化が期待されます。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究は東北大学との共同研究であり、生物系特定産業技術研究支援センター新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業「機能微生物ゲノミクスによる農耕地からの亜酸化窒素ガス低減化」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
研究内容 | http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result29/result29_16.html |
カテゴリ | 施肥 大豆 |