日本のトマト品種改良は多収化させず、果実糖度を高めて水分含量は維持した

タイトル 日本のトマト品種改良は多収化させず、果実糖度を高めて水分含量は維持した
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所
研究期間 2010~2012
研究担当者 東出忠桐
安場健一郎
鈴木克己
中野明正
大森弘美
発行年度 2012
要約 日本のトマトでは品種改良による多収化はみられない。桃太郎系品種以外では果実の糖度と乾物率との間に強い相関関係がみられるが、桃太郎系品種では果実の乾物率当たりの糖度が高く、それ以前の品種よりも糖度当たりの水分含量が高い。
キーワード 収量、糖度、乾物率、総乾物生産、品種
背景・ねらい オランダの施設トマトの収量は、生産技術や多収品種の発達によって1980年代から2000年代までに倍増し、10a当たり年間60tに至る。この多収化は品種面からみると光利用効率の向上に基づく植物体の総乾物生産の増加による(2009年度野菜茶業研究成果情報)。一方、日本のトマト収量は現在も1980年以前と変わらず10a当たり年間30t以下である。そこで、日本トマトの多収化を図るため、過去80年間の代表的品種の特性を解明し、低収量の原因を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 比較に用いた日本のトマト品種では、果実収量は、「桃太郎」(1985年発表)でそれ以前の品種よりも低いが、年代(主流品種として栽培された年代)の違いによる一定の傾向はみられず、品種改良による多収化はみられない。果実の乾物率においても年代による一定の傾向はみられない。地上部総乾物生産や光利用効率においても、収量と同様に「桃太郎」で低いものの、年代による一定の傾向はみられない(表1)。
  2. 桃太郎系品種(「桃太郎」、「桃太郎コルト」)を除くと、果実の糖度と乾物率との間には強い相関関係がみられる。桃太郎系品種では、果実の乾物率当たりの糖度が高く、糖度当たりの水分含量がそれ以前の品種よりも高い(図1)。
  3. 多収化に関連する形質として、地上部総乾物生産と光利用効率および最大光合成速度との間に相関関係がみられ、光利用効率と最大光合成速度との間にも相関関係がみられる。このとき、地上部総乾物生産が多くても必ずしも多収とならない理由は、果実数の違いに起因する果実への乾物分配率の違いが大きいためである(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 果実の乾物率が高いことは水分含量が低いことを示す。桃太郎以前の品種では高い果実糖度を達成するには水分含量をかなり低下させる必要があり、必ずしも食味向上には結びつかないと考えられる。
  2. 日本のトマトでは、多収化よりも食味の向上の方が重視されたため、多収品種の育成が進まなかったと考えられる。その際に、加工用トマトでみられるような単なる高糖度ではなく、果実の水分含量を高く維持したまま、糖度を高めた品種が育成されたと考えられる。
  3. 試験は、現代の日本の栽培環境(愛知県武豊町、ロックウール・ハイワイヤー栽培)で1~6月に行っている。果実糖度は果汁を屈折糖度計で測定し、果実乾物率は、105℃で48時間以上乾燥させた果実の乾物重を果実新鮮重で除した値である。
図表1 236007-1.png
図表2 236007-2.png
図表3 236007-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2012/141a0_02_02.html
カテゴリ 加工 乾燥 トマト 品種 品種改良 良食味

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