Na/K比1以上で発育可能なヨーロッパ腐蛆病菌非典型株の性状

タイトル Na/K比1以上で発育可能なヨーロッパ腐蛆病菌非典型株の性状
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2010~2012
研究担当者 髙松大輔
荒井理恵
富永 潔
呉 梅花
大倉正稔
伊藤一智
岡村直美
大西英高
大崎慎人
杉村祐哉
芳山三喜雄
発行年度 2012
要約 ミツバチの法定伝染病の原因菌であるヨーロッパ腐蛆病菌はNa/K比1未満の培地でないと発育しないとされていたが、日本にはNa/K比1以上でも発育する非典型的な性状のヨーロッパ腐蛆病菌株が存在する。
キーワード ヨーロッパ腐蛆病、Melissococcus plutonius、非典型株、Na/K比
背景・ねらい ヨーロッパ腐蛆病菌(Melissococcus plutonius)はミツバチの法定伝染病であるヨーロッパ腐蛆病の原因菌で、ミツバチの健康を脅かす重要な病原体の一つである。本菌の培養にはリン酸2水素カリウムを添加したKSBHI寒天培地など、Na/K比1未満の培地が必要であり、通常のBHI寒天培地には発育しないとされている。現在の病性鑑定指針にも「M. plutoniusはBHI寒天培地に発育しない」ことが明記されているが、我が国ではヨーロッパ腐蛆病を疑う幼虫から発育に培地へのカリウム塩添加を必要としない(すなわちBHI寒天培地に発育する)M. plutonius様菌が分離される事例がしばしば確認される。そこで、本病の正確な診断の一助とするために、M. plutonius様菌の分類学的位置付けを検討すると共に、その詳細な性状を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. M. plutonius様菌株の16S rRNA遺伝子配列はM. plutonius基準株の配列と99.8%以上の相同性を示し、DNA-DNAハイブリダイゼーションの結果においても両者は80%以上のDNAの相同性を示すため、分類学上はM. plutonius様菌株もM. plutoniusである。
  2. 典型的な性状のM. plutonius株(典型株)の発育には培地へのカリウム塩添加が必要であり、一部の株を除き5%CO2培養・好気培養では発育が確認されないが、M. plutonius様菌株として日本で分離されたM. plutonius株(非典型株)の発育にはカリウム塩添加を必要とせず、5%CO2培養・好気培養においても比較的良好な発育が認められる(表1)。
  3. 生化学性状は、M. plutonius非典型株でのみL-アラビノース、D-セロビオース、サリシンからの酸産生、エスクリンの加水分解およびβ-グルコシダーゼ活性が陽性である(表1)。
  4. M. plutonius非典型株はM. plutonius典型株より発育速度がはやく、大きなコロニーを作る傾向があるものの、コロニーの形状およびグラム染色像のみでは両者を区別することはできない(表1)。
  5. 日本には世界各国で分離される典型的な性状のM. plutonius典型株と、それとは大きく性状が異なる非典型株が存在するが、両者とも16S rRNA遺伝子を標的とした既報のPCR(Govan et al. AEM. 1998, 64, 1983-5)で同定可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:家畜保健衛生所等の病性鑑定担当者、養蜂家、蜂病研究者
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  3. その他:
    1. 農林水産省主催の研修会を通じて、全国の家畜保健衛生所等の病性鑑定担当者にむけて情報発信を行っている。
    2. 病性鑑定指針(農林水産省 消費・安全局)の改訂時に本成果を反映させる予定である。
    3. 家畜保健衛生所、海外の研究者から問い合わせあり。
図表1 236068-1.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2012/170a2_01_37.html
カテゴリ くり ミツバチ

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