分子生物学的種属判別法を用いた国内での乳房炎原因酵母の実態調査

タイトル 分子生物学的種属判別法を用いた国内での乳房炎原因酵母の実態調査
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2010~2012
研究担当者 林 智人
秦 英司
勝田 賢
菊 佳男
尾澤知美
松原朋子
田川裕一
杉田 隆
河合一洋
発行年度 2012
要約 酵母に特徴的なゲノム配列を持つ26S rRNA領域の遺伝子配列から、乳房炎由来酵母の種属判別を実施したところ、分離酵母は新たに同定した1種を含め7属14菌種である。また、わが国での酵母を原因とした乳房炎の割合は1.8%であり、地域的特徴はない。
キーワード 日本国内、臨床型乳房炎、乳房炎原因酵母、分子生物学的同定
背景・ねらい 臨床型乳房炎の原因となる微生物の実態を把握するためには、重要な原因微生物の一つである酵母の属および種レベルの検出および同定が必要であるが、臨床現場における細菌培養法ではそのレベルの同定は困難であり、実態は明らかになってない。本研究では、乳房炎由来の酵母株において、酵母に特徴的なゲノム配列を持つ26S rRNA領域をPCR法により増幅し、その遺伝子配列を比較解析して種属判別を行う分子生物学的同定法を応用して、わが国の酪農衛生環境で臨床的に重要な酵母の同定を行う。それにより得られる乳房炎原因酵母の分布状況と発症頻度の情報を臨床現場で共有し、菌種にあった治療法の開発など、わが国の乳房炎防除対策に活用する。
成果の内容・特徴
  1. 2011年に北海道の3地域(石狩、網走および十勝)および本州の2地域(茨城県と愛知県)から採材した臨床型乳房炎の分房乳汁3,244の検体を血液寒天培地で調査したところ、58株の酵母が分離され、臨床型乳房炎の酵母による発症率は1.8%となる(表1)。
  2. 分離された菌株の地域別内訳は、石狩地域で13株(1.1%)、網走地域で6株(2.7%)、十勝地域で20株(2.1%)、茨城県で4株(3.1%)、および愛知県で5株(2.1%)であり、各地域とも低頻度であり地域別の特徴はみられない(表1)。
  3. 酵母ゲノムの26S rRNA領域をPCR法により増幅し、その遺伝子配列を比較解析する分子生物学的同定法を用いることにより、わが国においては少なくとも7属14菌種の乳房炎原因酵母の存在が確認できる。
  4. 最も多く分離された酵母は、Pichia属のP. kudriavzeviia(22株)である。次いでCandida属のC. tropicalis(14株)である。その他には、Clavispora lusitaniae(5株)、Kluyveromyces marxianus(4株)、Trichomonascus ciferrii(2株)、Debaryomyces hansenii(1株)およびYamadazyma mexicana(1株)がみられる(表1)。
  5. 乳房炎由来酵母中これまでに報告のないCandida freyschussiiに近い1株が確認され、本分子生物学的同定法は新たな酵母菌の同定も可能である(図1)。
成果の活用面・留意点
  1. わが国における乳房炎発症原因となる酵母の種属判別および地域別特徴を明らかにした報告はない。本研究による成果は、臨床現場において共有し、菌種にあった治療法の開発など、乳房炎防除対策に活用する。
  2. 分子生物学的解析は酵母の種属判別が可能となる方法であり、酪農衛生環境における乳房炎原因酵母の実態を詳細に把握することが出来る。
  3. わが国を詳細に反映するデータにするため、さらに広範囲な乳房炎原因酵母の調査を行う必要がある。
図表1 236090-1.png
図表2 236090-2.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2012/170e1_03_27.html
カテゴリ 病害虫 治療法 乳牛 防除

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