タイトル |
気候変動下における地下ダム貯水量および硝酸性窒素濃度を予測するモデル |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2011~2012 |
研究担当者 |
吉本周平
石田 聡
土原健雄
白旗克志
皆川裕樹
増本隆夫
今泉眞之
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発行年度 |
2012 |
要約 |
地下ダム流域における水の挙動をタンクモデルで表現し、窒素の移動や化学変化に関する計算を組み込んだモデルであり、将来の気温や降水量の変化を入力することによって気候変動下における貯水量および硝酸性窒素濃度を予測することが可能である。
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キーワード |
地球温暖化、地下ダム、地下水、硝酸性窒素、タンクモデル、将来予測
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背景・ねらい |
南西諸島等の石灰岩島嶼では、1980年代から農業用水源の確保を目的とした国営地下ダム事業が展開され、完了地区では地下ダムを水源とした灌漑による農業生産の改善が見られている。一方、これらの気候変動に伴う降水量や気温の変動、あるいは都市化などの土地利用の変化によって、地下ダムの水資源の減少や水質の悪化が懸念される。本モデルは、地下ダム流域の水・窒素の動態を数値計算によって再現し、降水量や気温、土地利用のデータを入力して地下水位や硝酸性窒素濃度を予測する。
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成果の内容・特徴 |
- 本モデルは、降水量や気温、揚水量や窒素負荷量の日単位データを入力として、地下水位(地下ダム貯水量に換算可能)と硝酸性窒素濃度の日単位の変動を算出する。
- 本モデルは、水収支サブモデルと窒素収支サブモデルから構成される(図1)。水収支サブモデルは、流域を水理地質条件に従って分割した各ブロックが3段のタンクによって構成され、最下段のタンクが隣接するブロックと連結されることで飽和帯の地下水流動を表現するタンクモデルである。また、不飽和帯水層を通過する亀裂流や地下ダム止水壁の建設の影響を考慮した構造になっている。窒素収支サブモデルでは、化学肥料の溶解や硝化など窒素の複雑な形態変化を定式化している。
- 塩水浸入阻止型地下ダムである米須地下ダム(沖縄県糸満市)の流域を10のブロックに分割し(図2)、地下ダム建設前のデータによってパラメータをキャリブレーションしたモデルを、検証のために地下ダム建設後のシミュレーションに適用した結果を図3と図4に示す。モデルによって計算された貯留域の地下水位および硝酸性窒素濃度の挙動は、観測されたものを良好に再現していることが確認できる。
- このモデルに、予測される将来変化傾向を踏まえた気温や降水量のパターンを入力することで、地下ダムの貯水量および硝酸性窒素濃度の変動傾向を見積もることができる。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:農村の環境や流域の水質の保全管理に携わる市町村、県、環境省など
- 普及予定地域:本モデルは、既に地下ダムが供用されている地区や、地下ダム事業を実施中、計画中の地区で適用できる。地下ダム建設時の地質調査に基づく帯水層および基盤の情報があればモデルの構築が可能で、地下水位と硝酸性窒素濃度の継続的な観測データを得ることでモデルのキャリブレーションや検証ができる。また、地下ダム事業の実施時に作成される貯留モデルを水収支サブモデルの構築に利用することもできる。
- その他:降水量や気温だけでなく、土地利用、施肥量の変化が地下ダム貯水量・硝酸性窒素濃度に与える影響の見積りにも適用が可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2012/210e0_03_48.html
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カテゴリ |
肥料
施肥
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