タイトル |
用排水路の維持管理への非農家住民の参加を促す要因の選択方法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2009~2011 |
研究担当者 |
鬼丸竜治
國光洋二
合崎英男
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発行年度 |
2012 |
要約 |
維持管理への参加(労力負担)に関する質問紙調査のデータを、非農家住民の参加行動と影響要因との関係を表すモデルに入力し、大きな影響を与える要因を選択する方法である。この方法を使うと、参加を促すにはどの要因に働きかけるべきか判断できる。
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キーワード |
用排水路、維持管理、非農家住民、参加、労力負担、要因選択
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背景・ねらい |
近年、人口の減少や農家の高齢化の進行などにより、農業用の用排水路の維持管理に必要な労力が脆弱化している。そのため、非農家住民に対して、維持管理への参加(以下「労力負担」という。)を促す取り組みが進められている。彼らの労力負担を促すためには、負担を促す適切な要因に働きかけることが重要である。そこで、用排水路の維持管理における、非農家住民の労力負担を促す要因の選択方法を示す。
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成果の内容・特徴 |
- 労力負担を促すため非農家住民に働きかける場合、1)働きかけの対象者に対して労力負担に関する質問紙調査を行い、負担を促す要因の指標となる変数のデータを得る、2)データを「労力負担行動と影響要因との関係を表すモデル」に入力し、要因間の影響の大きさを計測する、3)労力負担行動に直接的・間接的に大きな影響を与える要因を選択する、という方法(図1)を用いて、負担を促す要因を選択する。
- 上記のデータを入力するモデルについて、1)労力負担行動に直接影響を与える要因は、労力負担意欲と労力負担能力、2)意欲に直接影響を与える要因は、農業用水に対する受益意識、労力負担の必要性意識、農業用水に対する関心、農業用水の利用に関する不安、農業用水に対する所有者意識、所属組織に対する義務感、他者に対する信頼感、3)2)の要因のうち農業用水に関係する要因に直接影響を与える要因は農業用水に関する知識、4)知識に直接影響を与える要因は農業用水に関する経験、がそれぞれ候補となる。
- 図2は、新潟県の非農家住民800人を対象者とした質問紙調査のデータを、構造方程式モデリングと呼ばれる統計手法を用いて表現したモデルに入力し、要因間の影響の大きさを計測した事例である。影響の大きさは、片矢印の脇に示した数字で示される。この数字は-1~+1の値をとり、絶対値が大きな方が大きな影響を与えることを表す。労力負担行動への影響の大きさを見ると、労力負担意欲からのものが0.43、労力負担能力からのものが0.15となっている。このことから、労力負担行動には能力よりも意欲の方が大きな影響を与えていることが分かる。同様に、意欲には、「他者に対する信頼感(0.46)」と「労力負担の必要性意識(0.43)」が、他の要因に比べて大きな影響を与えていることが分かる。したがって、労力負担行動を促すためには、信頼感や必要性意識を高める働きかけの内容から検討を始めると効果的である。
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成果の活用面・留意点 |
- 用排水路の維持管理を担う組織の役員や世話人が非農家住民に働きかける場合、この方法を使うと、どの要因に対する働きかけの内容から検討を始めるべきか判断できる。
- 本成果で示した数値や大きな影響を与える要因は、特定の被調査者を対象とした調査の結果であることに留意する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2012/411b0_04_06.html
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カテゴリ |
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