放射線照射検知の信頼のおける指標化合物2-アルキルシクロブタノン類

タイトル 放射線照射検知の信頼のおける指標化合物2-アルキルシクロブタノン類
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2009~2012
研究担当者 等々力節子
亀谷宏美
陳 蘇蘇
発行年度 2012
要約 2-アルキルシクロブタノン類を検出するための高感度分析法を開発し、この化合物が非照射品には存在しない照射特異的な分解生成物であることを再確認できたことから、アルキルシクロブタノン類は信頼のおける照検知用指標物質であると判断される。
キーワード 食品照射、検知技術、2-アルキルシクロブタノン類、GC-HRMS
背景・ねらい 脂質由来の放射線照射特異的分解生成物として食品中に生じる2-アルキルシクロブタノン類(2-ACBs)をGC-MSで検出する方法が照射食品検知のためのコーデックスの標準分析法に採用されている。2008年、この化合物が非照射の天然カシューナッツよびナツメグ中に存在するとの報告があり、この方法の照射検知法としての信頼性に疑義が生じている。
本研究では、2-ACBsを高感度に検出する分析法を開発し、ナツメグおよびカシューナッツについて、2-ACBsの天然存在の真偽を確認し、2-ACBsを指標物質とする植物性食品の照検検知法の信頼性を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 高分解能ガスクロマトグラフ-質量分析(GC-HRMS)を用いることで、2-ACBsを高感度検出できる。
  2. 非照射ナツメグに0.016μg/gの2-デシルシクロブタノン(2-DCB)標準化合物を添加した試料のGC-HRMS分析では2-DCBが確認できるが、同条件で同時分析した無添加(コントロール)試料には2-DCBは検出されない(図1)。
  3. 同様にナツメグ5ロットおよびカシューナッツ2ロットの非照射検体をGC-HRMSにより分析しても、供試したいずれの検体でも2-ACBsは検出されない。
  4. ガンマ線照射したナツメグ、カシューナッツには、脂肪酸組成に応じた2-ACBsが線量依存的に生成する(図2)。1kGyあたりの 生成効率は、前駆体脂肪酸1mmoleあたり1.3~3.8nmoleである。
  5. 5kGy以上の照射ナツメグ中の2-DCBおよび2-ドデシルシクロブタノン(2-dDCB)は、貯蔵に伴って減少するが、30週間後にも検出可能である(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究の結果から、天然(非照射)ナツメグ及びカシューナッツ中に2-ACBsは検出されず、他に天然存在を追認した論文も報告されていないことから、わが国でも厚生労働省が通知している2-ACBsを指標とした照射検知法は信頼性のおけるものと判断される。
  2. 2-ACBsの遺伝毒性を懸念する研究報告があるが、照射食品中の含有量は微量であり、同化合物を含む照射食品の摂取による健康影響について世界保健機関(WHO)、欧州食品安全機関(EFSA)等は問題にしていない。
図表1 236141-1.png
図表2 236141-2.png
図表3 236141-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2012/180d0_01_05.html
カテゴリ ナッツ

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