北海道向け多収水稲品種「きたあおば」の粗玄米収量ポテンシャルと多収要因

タイトル 北海道向け多収水稲品種「きたあおば」の粗玄米収量ポテンシャルと多収要因
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2008~2010
研究担当者 林 怜史
大下泰生
君和田健二
辻 博之
牛木 純
宮浦寿美
澁谷幸憲
発行年度 2012
要約 「きたあおば」は、気象条件が良好な年には多肥条件でシンク容量が約1.8t/10aに達し、1t/10a以上の粗玄米収量ポテンシャルを示す。主食用品種「きらら397」と比較した多収要因は成熟時地上部乾物重、シンク容量、出穂時地上部乾物重あたりのシンク生産量が大きいことである。
キーワード イネ、収量ポテンシャル、飼料用米、新規需要米、超多収水稲
背景・ねらい 北海道の水稲栽培は低コスト・省力的で、低価格が求められる飼料用米や新規需要米生産のための多収水稲品種の導入が期待される。一方、これまで、北海道向けの多収品種はなく、2008年に初めて穂重型の「きたあおば」が登録出願された。そこで、「きたあおば」の粗玄米収量ポテンシャルを明らかにし、その収量性を北海道の主要な主食用品種である「きらら397」と比較する。
成果の内容・特徴
  1. 「きたあおば」の粗玄米収量増加への影響は、収穫指数より成熟時地上部乾物重が、シンク充填率よりシンク容量が大きい(表1)。シンク容量の拡大には、千粒重より面積あたり籾数の寄与が大きい。面積あたり籾数の増加には、面積あたり穂数と一穂あたり籾数のいずれも有意な影響があるが、穂数の影響の方が大きい。
  2. 「きたあおば」のシンク容量の変異は、460~1,817kg/10aと極めて大きく、気象条件が良好な年(2008年、分げつ期にあたる6月の積算日射量は594MJ/㎡で平年比104.5%、幼穂分化から出穂までにあたる7月の積算気温は612℃・日で平年比104.4%)は大きなシンク容量が得られる(図1)。粗玄米収量をシンク容量とシンク充填率の関係から見ると、倒伏が見られない場合には、シンク容量を増加させることで収量は増加している。回帰直線と等収量曲線との関係から、シンク容量約1,800kg/10aで最も多収となる。
  3. 「きたあおば」の粗玄米収量は、窒素吸収量の増加に伴って増加し、窒素吸収量が19kg/10aを超えると収量は1t/10aを超えるが、それ以上の増収程度は緩慢となる(図2)。
  4. 同一施肥条件における「きたあおば」の粗玄米収量は「きらら397」より高い(図3)。その要因は、成熟時地上部乾物重およびシンク容量が大きいことである。「きたあおば」の乾物生産は登熟期に旺盛であり、登熟期の気象条件が良好な年(2008年、出穂後50日間の積算日射量は831MJ/㎡で平年比112.8%、出穂後26~50日目の積算気温は376℃・日で平年比108.2%)には出穂後の乾物生産は全体の64%を占める。また、「きたあおば」は、出穂時地上部乾物重あたりのシンク生産量も「きらら397」より大きい。
成果の活用面・留意点
  1. 本試験は、2008年および2010年に、窒素施肥量0から23.7kg/10aの条件において、北海道農業研究センター(札幌市)内で行ったものである。冷害年であった2009年のデータは含まれていない。
  2. 「きたあおば」栽培に向けた生育指標の作成、多収品種育種時の情報として活用可能である。
  3. 「きたあおば」はいもち病抵抗性、障害型耐冷性、耐倒伏性に劣るため、栽培時には注意が必要である。
図表1 236156-1.png
図表2 236156-2.png
図表3 236156-3.png
図表4 236156-4.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2012/111b1_01_02.html
カテゴリ 育種 いもち病 飼料用米 水稲 施肥 抵抗性 低コスト 凍害 品種

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