水稲作におけるリン酸減肥の基本指針

タイトル 水稲作におけるリン酸減肥の基本指針
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2009~2013
研究担当者 新良力也
塩野宏之
齋藤寛
熊谷勝巳
金井政人
南雲芳文
土田 徹
池羽正晴
宮本寛
橘恵子
吉澤比英子
出口美里
宮崎成生
林元樹
東野敦
牧田尚之
赤井直彦
有簾隆男
上田重英
古江広治
白尾吏
餅田利之
伊藤豊彰
発行年度 2013
要約 地力増進基本指針における改善目標の下限値を基準とし、安全を見越した幅を持たせて、有効態リン酸が10~15mg/100gの場合には各地の土壌条件に応じて標準施肥量~その半量の施肥を、15mg/100gより大きい場合には半量の施肥を推奨する。

キーワード リン酸減肥、水稲作、有効態リン酸、地力増進基本指針、改善目標
背景・ねらい 肥料原料の輸入価格が2008年に急騰し、農業生産における肥料費の抑制が喫緊の課題になるとともに、原料資源の有限性に対する危機意識から資源の有効利用が以前にも増して大きな課題となった。一方、多くの水田土壌では、長年努力を続けてきた土壌改良の結果、地力増進基本指針の改善目標の下限値(トルオーグ法による有効態リン酸が10mg/100g乾土)を超えてリン酸が蓄積している状況が見られるようになっている。高まる肥料節減の要望に対し、減肥が十分可能と考えられてきたが、広く普及できる明確な減肥指針がなかった。そこで、全国各地に広がる主要な土壌におけるリン酸施肥反応に基づき、水稲作のリン酸を減肥する指針を策定する。
成果の内容・特徴
  1. 有効態リン酸が10mg/100g前後の土壌では、リン酸を各県が定める標準施肥量の半量程度まで減肥した栽培を4年間継続しても、分げつ期の茎葉リン酸濃度や穂数などの生育量と収量が確保できる(収量のみ図1に示す)。
  2. リン酸無施肥を継続すると、土壌中の有効態リン酸は減少する。減少経過は数式モデルで解析でき、その減少は、粗粒質な低地土で早い(図2、表1)。
  3. 改善目標の下限値を維持するために必要なリン酸施肥量は、数式モデルから得られる有効態リン酸の下限値からの年間減少量を補給できる施肥量で、野外培養実験で求めた施肥リン酸が土壌の有効態リン酸に変化する割合に基づいて表2の通り算出される。
  4. 改善目標の下限値を下回らないためには、表2の施肥量が必要で、概ね、標準施肥量~その半量程度であり、非黒ボク土では、リン酸吸収係数が大きい土壌ほど大きい。
  5. 有効態リン酸が下限値より大きく蓄積している土壌では、リン酸施肥量を表2の値より減らすことが可能である。半量程度の施肥により、有効態リン酸の減少はかなり緩和できるので15mg/100gより大きい場合には半量施肥を推奨する。
  6. リン酸半量施肥の場合には、数式モデルから算出されるリン酸無施肥栽培で下限値に達するまでの期間(例えば15mg/100gの時点からは、中粗粒灰色低地土で2年、その他土壌では5~7年)を目安に土壌診断を実施して施肥量を見直すことが無難である。
  7. リン酸肥料を半量に減肥すると、肥料費は10~20%削減される。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:都府県農政部等で水稲に関する施肥方針を策定している機関および生産者
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:本州以南の水稲作地帯
  3. その他:本指針は、稲わらを全量還元する圃場に適用する。また、各地域において、品種、気象条件なども考慮し、修正を加えて活用する。なお、造成・土壌改良後の経過年数が短い黒ボク土では、有効態リン酸の減少が大きいために土壌診断に基づいたリン酸質土壌改良資材の投入が必要である。
図表1 236411-1.jpg
図表2 236411-2.jpg
図表3 236411-3.jpg
図表4 236411-4.jpg
図表5 236411-5.jpg
図表6 236411-6.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2013/13_004.html
カテゴリ 肥料 水田 水稲 施肥 土壌改良 土壌診断 品種

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