タイトル |
土着寄生蜂コナガサムライコマユバチの簡易捕獲法および遺伝子診断法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2012~2012 |
研究担当者 |
屋良佳緒利
下田武志
日本典秀
長坂幸吉
守屋成一
後藤千枝
|
発行年度 |
2013 |
要約 |
コナガの有力な土着天敵コナガサムライコマユバチは、コナガ幼虫をコマツナ株に寄生させた「コマツナトラップ」で簡易に捕獲できる。トラップから回収した被寄生コナガ幼虫から得られたハチは、特異的PCRプライマーによって簡便に同定可能である。
|
キーワード |
コナガサムライコマユバチ、コマツナトラップ、PCRプライマー、捕獲、同定
|
背景・ねらい |
圃場内外における天敵昆虫類の保護・放飼増強等を通じて害虫の生物的防除を進める上で、天敵の効率的な捕獲および簡便な判別を行うことが必要である。しかし、アブラナ科作物の害虫であるコナガの有力な土着天敵コナガサムライコマユバチは微小で採集が困難である上に他の寄生蜂との形態的な識別は容易ではない。そこで、本種の簡易捕獲法、ならびに捕獲個体の簡易同定のための遺伝子診断法を開発する。
|
成果の内容・特徴 |
- コナガ寄生コマツナ株をネットで覆い水を張った水槽内に設置することで、コナガサムライコマユバチを誘引し、効率的に被寄生コナガ幼虫を回収できる「コマツナトラップ」を作成する(図1)。本トラップは、コナガ幼虫に加害されたコマツナが生産する天敵誘引物質に天敵寄生蜂が誘引されることを利用したものであり、回収した被寄生コナガ幼虫をコマツナ株上で室内飼育することにより寄生蜂成虫を得ることができる。
- コナガ幼虫寄生蜂であるコナガサムライコマユバチ、コナガヒメコバチ、Griptapanteles sp.およびモンシロチョウ幼虫寄生蜂であるアオムシサムライコマユバチのミトコンドリアDNAのCOI遺伝子のDNAバーコード領域の塩基配列を解析して得られたプライマーCvFn(5'-ACCAGTAATAATTGGTGGAT-3')およびCvRn(5'-ATGACCTAAAATTAA-TGATAATG-3')は、コナガサムライコマユバチのみで特異的に201塩基長のPCR産物を増幅する(図2、レーン1~4)。
- CvFnおよびCvRnを用いたPCRで、コマツナトラップで採集された寄生蜂の中から、コナガサムライコマユバチのみを容易に検出可能である(図2、レーン5~8)。
- アブラナ科野菜圃場にコマツナトラップを設置することで、6月から7月にかけて、コナガサムライコマユバチ成虫を多数得ることが可能である(表1)。
|
成果の活用面・留意点 |
- コマツナ株を覆うネットは市販の三角コーナー用水切りネットで代用できる。ネットを用いない場合、コナガ幼虫が株から脱落し、回収効率が低下する可能性がある。
- PCRは、Ex Taq® Hot Start Version(タカラ)を用いた場合、温度反応条件は94°C1分の後,94°C30秒−50°C30秒−72°C1分のサイクルを35回,最後に72°C7分で効果的に増幅産物を得ることが可能である。他のPCR酵素を用いても検出可能であるが、反応条件の変更が必要となる場合がある。
- 本遺伝子診断法では1個体毎の同定が可能であり、各寄生蜂からのDNA抽出は1個体ずつ行う。DNA抽出方法は任意の方法を用いることができる。
- コナガサムライコマユバチ成虫を20頭以上採集できれば、コナガ寄生コマツナ株を用いた室内大量飼育(成虫1000頭以上/週)やコナガ発生圃場への天敵放飼が可能である。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2013/narc13_s22.html
|
カテゴリ |
病害虫
あぶらな
害虫
こまつな
生物的防除
土着天敵
|