ニホンナシ花粉側自家和合性突然変異体415-1の自家和合化の原因

タイトル ニホンナシ花粉側自家和合性突然変異体415-1の自家和合化の原因
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2005~2013
研究担当者 間瀬誠子
澤村豊
髙田教臣
西尾聡悟
山本俊哉
齋藤寿広
池谷祐幸
発行年度 2013
要約 花粉側自家和合性変異体415-1は、S 遺伝子座を含む染色体の一部分が重複している二倍体で、S 遺伝子型はS4S5S5 である。重複S5 遺伝子を含むS4S5 花粉を生産するため、自己を含む全てのS 遺伝子型の品種に対して和合性を示す。
キーワード ニホンナシ、花粉側自家和合性突然変異、S 遺伝子、重複
背景・ねらい ニホンナシ果実の安定生産上必要とされる、人工受粉作業に関わるコストと労力を軽減するため、自家和合性品種の育成が求められている。しかし、交雑育種に利用可能な二倍体の育種素材は、花柱側和合性の「おさ二十世紀」しかなく、近親交配が問題となっている。そこで、新たな自家和合性育種素材獲得が試みられ、ガンマ線照射した「幸水」樹の花粉を交雑した後代から、新規花粉側自家和合性系統415-1が選抜されている。この系統を利用した花粉側自家和合性品種の育成を効率的に行うためには、早期選抜のためのDNAマーカーを作成する必要がある。そこで、415-1後代における自家不和合性遺伝子(S 遺伝子)等の分離比を調査し、花粉側自家和合性変異の原因を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 415-1(S-RNaseマーカー遺伝子型はS4S5 )の自家受粉後代のS-RNaseマーカー遺伝子型は、全てS4S5 である。S4 ・S5 のどちらかの花粉側自家不和合性遺伝子が和合化した場合に生ずるはずの、S4 ホモ個体・S5 ホモ個体は出現しない。従って、415-1は花粉側自家不和合性遺伝子の機能喪失変異により和合化したのではない。
  2. 415−1の花粉を「新高」(S3S)の花柱に受粉して得られた後代には、S 対立遺伝子を3種類持つ個体(S3S4S5S4S5S9 )が出現する。それらは、花粉親415-1から2種類のS 対立遺伝子(S4 とS5 )、種子親から1種類のS 対立遺伝子を受け継いでいる。
  3. フローサイトメーターで倍数性を解析した結果、415-1は「幸水」と同じ二倍体である。
  4. S 遺伝子が座乗する連鎖群のSSRマーカーの解析を行ったところ、415-1ではS5 対立遺伝子と、それに密接に連鎖するSSR対立遺伝子が重複しているが、遺伝的距離が遠いSSR座は重複していない。また、S5 重複領域はS4を含む染色体と共に遺伝する。よって、415−1はS5を含む染色体の一部分が重複して、S4 を含む染色体に付加されており、S5 のみを持つ染色体と併せて、合計3カ所のS 遺伝子座を持つ(図1)。
  5. 415-1の正確なS 遺伝子型はS4S5S5 であり、S4 と重複S5 を同時に持つ花粉を生産する。S4S5 花粉は、自己(S4S5 )花柱に対して和合性となると推定される(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 415-1は、ニホンナシでは初となる、二倍体の花粉側自家和合性系統である。あらゆるS 遺伝子型の二倍体品種と交雑することが可能である。得られた実生から、重複S5 遺伝子をマーカーとして、花粉側自家和合性個体を選抜することができる。
  2. 415-1花粉を、S4 ・S5 の両方、またはどちらかを持つ品種に交配すると、重複S5 遺伝子を持つS4S4S5 またはS4S5S5 の実生が出現する。これらの個体は、通常行われるS-RNase のPCR-CAPSマーカー解析では、重複を持たない個体(S4S5 )と区別することができないため、各々が持つS 対立遺伝子の種類と数を正確に判定する技術を開発する必要がある。
  3. 415-1からS4 ・S5 両方を受け継いだ個体は、S5 のみを受け継いだ個体より少ない。その原因を明らかにするため、S4S5 花粉の生産割合と受粉能力を調査する必要がある。
図表1 236476-1.jpg
図表2 236476-2.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/fruit/2013/fruit13_s02.html
カテゴリ 育種 コスト 自家和合性品種 受粉 DNAマーカー 品種

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