谷池型ため池群による下流河川の洪水抑止

タイトル 谷池型ため池群による下流河川の洪水抑止
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2011~2013
研究担当者 吉迫宏
福本昌人
小川茂男
中嶋勇
発行年度 2013
要約 谷池型ため池群は下流河川の洪水を抑止する。ため池群は降雨前に貯水量の半分を空き容量にすると、下流河川のピーク流量を10%程度減少できる。豪雨予測に基づく事前放流により空き容量を確保すれば、ため池群による下流域の洪水抑止が可能である。
キーワード ため池、洪水抑止、貯水率、広域洪水流出モデル
背景・ねらい 流域に多数散在する谷池(以下、ため池群)はかんがい水源であるとともに、下流河川の洪水を抑止していると考えられる。しかし、ため池群を積極的に農地の湛水防除などの防災・減災へ活用する際の基礎情報である、貯水状況やこれに基づく洪水抑止効果の評価は行われていない。
そこで典型的な谷池型ため池群流域において、ため池の貯水率調査と広域洪水流出モデルを用いたシミュレーションを実施し、現況のため池群が下流河川に対して発揮している洪水抑止効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 対象流域である広島県東広島市A川上流域は中国山地を構成する標高約400~600mの丘陵地帯であり、中小規模の谷池による典型的なため池群を持つ。流域内のため池は小規模な谷池が丘陵と河川沿いの緩傾斜地の境目に、水田を中心とする農地と集落は河川沿いの緩傾斜地に主に立地する(図1、表1)。下流河川の流量・水位はため池群を組み込んだ広域洪水流出モデルで計算する。
  2. 対象流域においては、水田の転用・転作や用水路のコンクリートライニング・パイプライン化に伴い無効浸透・放流が減少していることに加え、干ばつ時の補助水源として用いられているため池が多いことから、平年~多雨年における梅雨入り時と台風シーズン時(かんがい終期)の総貯水率は満水に近い(表2)。
  3. ため池群が発揮する洪水抑止効果(河川上の基準点におけるピーク流量減少率で評価)は降雨前のため池の空き容量に支配され、降雨前の空き容量が大きいほど効果は大きい。ため池群は降雨前に貯水量の半分を空き容量とすると、下流河川のピーク流量を10%程度減少できる。豪雨予測に基づく事前放流により空き容量を確保すれば、ため池群による下流域の洪水抑止が可能である(図2)。
  4. 観測貯水率を降雨前の貯水率に設定し、基準点におけるピーク水位が堤防護岸の天端高さに達する降雨強度(確率年)を広域洪水流出モデルによる逆解析で求めた結果、得られた確率年はいずれも流域のため池群が全て潰廃した場合の確率年よりも大きく、流域のため池群は基準点における洪水抑止に寄与している(表2)。特に少雨年は、梅雨入り時や台風シーズン時においてため池群の総貯水率が低く洪水緩和に寄与する空き容量が大きいことから、ため池群による下流河川の洪水抑止が期待できる。洪水抑止効果の発揮にあたっては、ため池群に洪水調節容量を設定するとともに、降雨前の事前放流等による空き容量の確保が重要である(図2、表2)。
成果の活用面・留意点 ため池群の洪水抑止効果を下流域の農地等を対象に発揮させる場合における基礎情報として活用できる。
図表1 236616-1.jpg
図表2 236616-2.jpg
図表3 236616-3.jpg
図表4 236616-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2013/nkk13_s16.html
カテゴリ 病害虫 傾斜地 水田 防除

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