摂食中のヒトの舌活動測定と測定値に基づくやわらかい食品物性の新規評価法

タイトル 摂食中のヒトの舌活動測定と測定値に基づくやわらかい食品物性の新規評価法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2010~2013
研究担当者 神山かおる
早川文代
高智紅
西成勝好
船見孝博
石原清香
中馬誠
中尾(木子)理美
発行年度 2013
要約 超音波画像診断装置等を用いて、摂食時の舌の力学特性、筋活動、運動等の測定値を得る。ヒト舌の力学特性に近い人工舌を組み込んだ機器測定により、舌で潰して食べられる食品か、あるいは歯で噛まなくてはならない食品かを容易に判定できる。
キーワード テクスチャー、食品ゲル、人工舌、超音波画像診断装置、筋電位
背景・ねらい 食品のテクスチャー(食感)は美味しさを左右するだけでなく、安全に摂食できるか否かを決定する重要な因子である。高齢化が進む中、テクスチャーを制御した、いわゆる介護食品のニーズも高まっている。介護食品の力学特性として、歯で噛まずに舌で容易に潰せることが要求される場合が多いが、要介護者と食品を生産・供給する健常者とはテクスチャー感覚が異なるため、客観的な数値基準が必要とされている。
本研究は、介護食品等の食べやすいテクスチャーの食品を客観的に簡易に示す手法開発を目的としたものである。食品を自然に食べているヒトの生理学的測定値から、食べやすさに関わる因子を明らかにし、一般的な機器測定による食べやすさの評価を目指す。
成果の内容・特徴
  1. ヒトの摂食中の筋活動は、表面筋電位でモニターできる(図1)。これまで主に測定されてきた咬筋等の閉口筋に加えて、開口や舌の動きを反映する舌骨上筋群の筋電位を測定する。被験者には、摂食開始時、嚥下時ごと、および終了時にボタンを押させる。
  2. 筋電位は、第一嚥下の前後(図1のT1とT2)で異なるパターンとなる。T1ではリズミカルな咬筋の活動が観察され、歯で咀嚼する時の筋活動が、T2では、主に、嚥下できる食塊を作るために舌が働く時の筋活動が示される。噛まずに舌と硬口蓋の間で押し潰して食べられるやわらかい食品では、T1期のパターンが見られない筋電図が得られる。
  3. 外部からは見えない舌運動は、医療用超音波画像診断装置によりモニターできる(図2)。超音波の反射強度を輝度で示した通常のB(Brightness)モード画像で、舌の中央線を選ぶ。その線に沿った舌表面の超音波プローブからの距離の時間的変化をM(Motion)モードで解析し、最大変位、運動時間、速度等の舌運動測定値を得る。
  4. 嚥下のタイミングは、超音波M モード画像に嚥下音センサー出力を同時に記録するとわかる(図2)。食塊を口腔内の舌上から後方の咽頭部に送るため、嚥下時に現れる舌の上下運動は、食品物性と食塊量に影響される。
  5. ヒトの舌の力学特性は、シート状の圧力センサーで測定する。食品を潰そうと力を入れた状態の舌は、力を抜いた状態より約10倍かたくなる。
  6. ヒトの舌に近い力学的性質をもつソフトマテリアルを利用して人工舌を作成し、力学測定装置に組みこんだ試験を行う。舌で容易に押し潰せるやわらかい食品は人工舌上で壊れるが、歯で噛む必要のあるかたい食品は壊れない(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 超音波法は、嚥下障害の診断に多用されるビデオフルオログラフィーと比較して、造影剤を入れない食品を試料にでき、被曝の危険性がなく、検査室や技師も不要という利点がある。
  2. 咀嚼挙動解析の手法はどれも非侵襲であり、高齢者の摂食挙動評価にも応用できる。
  3. 人工舌を用いた評価系は、試食しなくても、舌で潰して食べられるか否かが簡単に推定できるため、介護食品開発に活用できる。
図表1 236634-1.jpg
図表2 236634-2.jpg
図表3 236634-3.jpg
図表4 236634-4.jpg
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図表6 236634-6.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2013/nfri13_s08.html
カテゴリ 評価法

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