タイトル |
SSRマーカーを用いた同一品種栽培圃場間のいもち病菌集団の識別 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2009~2012 |
研究担当者 |
善林 薫
鬼頭英樹
鈴木文彦
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発行年度 |
2013 |
要約 |
選択したSSRマーカーによりいもち病菌のハプロタイプを判別することで、同一品種を栽培する離れた圃場間のいもち病菌集団を識別し、集団間の遺伝的差異を評価できる。
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キーワード |
SSRマーカー、イネいもち病、ハプロタイプ、遺伝子多様度、遺伝的距離
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背景・ねらい |
イネのいもち病抵抗性の持続性を評価するためには、抵抗性を侵害するいもち病菌の動態を、圃場において集団レベルで把握する必要がある。鈴木ら(2012)が開発した12座のSSRマーカーは、異なる県間における圃場分離いもち病菌の識別に有効であるが、より遺伝的に近縁と予想される同一地域・同一品種の異圃場間の菌集団の識別が可能であるかは不明である。 そこで、同一品種を栽培する離れた圃場間のいもち病菌集団について、SSRマーカーを用いて集団間の識別が可能であるかを明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 解析集団の各いもち病菌について、12座のSSR遺伝子型を決定する。各マーカーについて増幅産物のサイズ(アリル)を調査し、本試験では多型性のない座と多型性が高すぎる座を除いた8座(Mgms01、Mgms02、Mgms04、Mgms06、Mgms08、Mgms09、Mgms14、ms99-100)を用いて、それらのアリルを組み合わせたハプロタイプを決定する(図)。
- 直線距離で約1km離れ、同一JAから供給された異なる採種圃産種子を用いた同一品種栽培圃場YA(10a)およびTA(70a)から分離したいもち病菌の遺伝子多様度は、それぞれ0.863、0.755と非常に高いことから、一圃場内のいもち病菌集団の識別に対してSSRマーカーは有用である(表1)。
- 遺伝的距離を用いて集団分化の検定を行った結果、異圃場集団間は遺伝的に異なる集団であると判定される(表2、赤枠)が、各圃場内の発生時期別集団間では遺伝的差異は検出されない(表2、青枠)。
- これらの結果より、8座のSSRマーカーにより決定したいもち病菌のハプロタイプを用いることで、同一品種を栽培する離れた圃場間のいもち病菌集団を識別できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本マーカーは、種子伝染および近接する圃場からの菌の拡散が及ぼす発病の影響や、越年前後の菌集団のハプロタイプ構成の変化等、いもち病菌の個体群動態解析に利用できる。
- 解析する集団により各マーカーのアリル数は異なること、また解析目的により必要な識別能も異なることから、使用マーカーの種類および数は試験に応じて選ぶ必要がある。
- 本成果では、「SSRマーカー」をSSR(単純反復配列)の反復数の違いを利用したDNAマーカー、「ハプロタイプ」を各SSRマーカーの組み合わせによって決定した個体の遺伝子型と定義して用いている。
- SSRマーカーの詳細については、鈴木ら(2012)日植病報78:10-17 を参照されたい。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2013/tarc13_s12.html
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カテゴリ |
いもち病
DNAマーカー
抵抗性
品種
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