タイトル |
籾摺機での玄米の放射性物質による汚染を防ぐ機内残留物除去方法「とも洗い」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター |
研究期間 |
2012~2012 |
研究担当者 |
野田崇啓
日髙靖之
重松健太
山下貴史
宮原佳彦
窪田陽介
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発行年度 |
2013 |
要約 |
籾40~50kgを籾摺機に投入し、3分間循環運転後、全量排出する操作「とも洗い」により、放射性物質による籾摺時の玄米汚染の原因である籾摺機内残留物を効率的に除去できる。 とも洗い後に籾摺した玄米の放射性セシウム濃度は、食品基準値を大きく下回る。
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キーワード |
籾摺機、とも洗い、放射性セシウム、交差汚染、除染
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背景・ねらい |
平成24年度に実施した福島県産米の全量全袋検査において、籾摺機内の残留物混入が起因と推定される、放射性セシウム(以下、Cs)による玄米の交差汚染事例(農産物が農機具等に付着している放射性物質に汚染されること)が確認された。そこで、東京電力福島第一原子力発電所事故後に営農を再開する地域等で、籾摺機による玄米の交差汚染を防止するための籾摺機の操作方法を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- とも洗いとは、交差汚染の原因となる機内残留物の玄米への付着および混入を防止するため、原料である籾を用いて機内残留物を洗い出す操作方法である。具体的には、40~50kgの籾を籾摺機に投入し、籾摺機内で3分間循環運転を行った後、全量排出する操作方法である(図1)。慣行より長い3分間の循環運転によって、機内残留物を原料に付着させ、少ない原料での効率的な残留物除去をねらいとする。なお、とも洗いに用いた原料は、誤って出荷する玄米に混入しないよう明確に区分して管理する。
- 未清掃の籾摺機を対象に、籾40kgでとも洗いを行うと、とも洗い原料には機内の残留物が多く付着し、その放射性Cs濃度は高い値を示す(図2)。とも洗い後に改めて籾摺すると、玄米の放射性Cs濃度は、食品基準値(100Bq/kg)を大きく下回る(図2)。汚染程度の異なる籾摺機延べ4台で同様の傾向を示し、とも洗い後に籾摺した玄米が食品基準値を超える事例は認められなかった。
- とも洗いは、籾摺機を所有する農家が実施できる、新旧問わずほぼ全ての籾摺機に適用できる、作業が短時間である、さらに、機体の分解といった一般的な清掃方法に比べて費用も安価である。そのため、とも洗いは、生産現場に導入しやすい交差汚染防止対策である。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:平成25年度から作付けを再開した地域の農家を対象としている。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:作付けを再開した地域870ha。
- その他:本成果は、2013年7月農林水産省公表の「米の収穫・乾燥・調製工程における放射性物質交差汚染防止ガイドライン」に活用された。とも洗いは福島県営農再開支援事業に利用され、とも洗いの実施に要する原料代等の必要経費は、補助対象となっている。籾摺機の機種別とも洗い手順はマニュアル化され、農研機構HPよりPDFで入手できる。とも洗いのできない機種、具体的には万石選別方式の籾摺機の一部と選別機構を持たない小型籾摺機では、通常の籾摺を長めに行うことで同様の効果が期待できる。生産現場では、とも洗い作業の前後に取扱説明書に従った通常清掃を組み合わせることで、より確実に交差汚染を防止できる。選別・計量機も、とも洗いによる機内清掃が必要であり、その必要経費も補助対象となっている。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/brain/2013/13_082.html
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カテゴリ |
乾燥
出荷調整
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