タイトル |
ため池等の水域の底質に含まれる放射性Csからのガンマ線計測システム |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2013~2014 |
研究担当者 |
吉永育生
高木強治
島崎昌彦
久保田富次郎
吉本周平
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発行年度 |
2014 |
要約 |
アクリルの防水容器にCsI検出器を内包することで底質からのガンマ線を効率よく計測し、人工衛星による位置情報とガンマ線の値をリアルタイムで描画できるシステムである。ガンマ線の平面的な分布傾向の把握やホットスポットの抽出を効率よく実施できる。
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キーワード |
水中線量計、底泥、GNSS
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背景・ねらい |
ため池などの水域の底質に含まれる放射性セシウム(以下、放射性Cs)濃度を計測するには、底質を採取した後、実験室にて24時間の炉乾、粉砕等の前処理が必要であり、多地点での計測はコストと時間を要する。また、底質中の放射性Cs濃度は近接する地点でも値が大きく異なることがある。このため、水域内での面的な放射性Csの分布状況を概略的に調べることは有効である。そこで、市販のCsI検出器を応用し、放射性Csから放出されるガンマ線を現場で効率的に計測を行う手法を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- 計測装置は、市販のCsI検出器をアクリルの防水容器に内包する(図1)。ガンマ線を計測する際、検出器に到達するガンマ線の計数が多いほど誤差が小さい。本装置は、CsI検出器の周辺は空気であるため、水によるガンマ線の遮蔽の影響が小さく、効率的な検出が可能である。また、測定範囲は防水容器の底面を中心とした領域となり、通常のコアサンプリングに比較して広いので、局所的な放射性Csの分布の偏りに影響を受けにくい。
- 開発したソフトにより、CsI検出器から連続出力されるcsvファイルと、GPSモジュール(GNSS)からのGPRMCもしくはGPGGAフォーマットのlogファイルを照合し、移動の軌跡とガンマ線の値をリアルタイムで描画する(図2)。
- 開発したソフトは、該当ファイルを任意のインターバルで読み込む仕様としており、本システム以外の計測機にも対応できる。また、過去のデータを重ねて表示でき、一連の計測結果をkmlファイル(GoogleEarth等で描画できる)に出力できる(図2)。
- 本システムにより、水域内の底質におけるガンマ線の面的な分布傾向を容易に把握でき、ホットスポットや対策が必要な箇所の抽出を効率的に実施できる。なお、計測は地点ごとに実施し、地点間の移動の際は装置を底質から50cm程度引き上げ、底質を乱さないように注意する。実際のため池では、1時間で約30地点の計測が可能である。
- 含水比などの底質の性状が類似している同一水域内では、底質表層で得られたガンマ線の値から、底質に含まれる放射性Cs濃度(Bq/kg)の値を概略予測できる(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:ため池除染にかかる行政機関、コンサルタント
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:開発したソフトはホームページでダウンロードできるよう公開予定である。
- その他:水深が極めて浅い場所では、周辺環境からのガンマ線がCsI検出器に到達するため、過大な計測結果となる可能性がある。本システムによる計測は、水深30cm から5mの水域を対象とする。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/14_077.html
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カテゴリ |
コスト
GPS
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