タイトル |
農業水利施設の洪水危険度評価のための短時間単位の豪雨データの模擬発生法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2010~2014 |
研究担当者 |
皆川裕樹
増本隆夫
工藤亮治
吉田武郎
名和規夫
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発行年度 |
2014 |
要約 |
地域の降雨特性を考慮した短時間単位の豪雨データを容易に多数得るための手法である。これにより観測値が十分でない地域でも未経験の豪雨を含めた幅広い降雨パターンを容易に想定でき、雨の降り方によって異なる農地等の浸水・洪水危険度を評価できる。
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キーワード |
豪雨パターン、模擬発生、降雨波形、自己相関性、浸水危険度評価
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背景・ねらい |
気候変動等による豪雨の強大化により、特に低平地域においては洪水や農地冠水による作物被害などの増加が懸念される。これらの被害発生リスクの評価には入力する豪雨の量とパターン(短時間の雨の降り方)が大きく関係するため、この両方を考慮した評価が必要となる。しかし、短時間単位の観測降雨が十分に蓄積されている地点は多くないうえ、従来の降雨波形策定法では多様な豪雨パターンは想定できない。そこで、排水施設やため池などの水利施設の安全性評価、全国農地浸水マップの策定、さらに農業農村整備事業の設計基準等で活用するため、観測値のもつ特性を考慮した短時間単位の豪雨データを容易に多数得られる模擬発生手法を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- 本手法は図1に示す手順で構成される。豪雨の地域特性は、事前に対象地区の観測豪雨より把握し考慮することができる。降雨期間は1日~3日程度で設定し、豪雨個数が決まるとそれぞれの総雨量を日雨量単位で決定する(STEP 1、2)。その後、すべての総雨量を1時間単位等の短時間雨量へ配分し降雨波形を発生させる(STEP 3 (1)~(3))。
- STEP 3の(1)で実施する総雨量の時間配分結果では、強度分布特性を考慮した雨量値がランダムに配置される(例えば図(2a))。この雨量値を並べ替えることで、降雨波形の自己相関特性(≒同じ雨量系列で時間をずらして比較したときの相似性)を再現する。
- STEP 3の(2)では、並べ替え処理の参照とするため、前後で相関性がある値が連続して並ぶ波形パターンを別途発生させる(図2(a))。STEP 3(3)では、両系列内ですべての値に対して大きさに注目した順位付けを行い、その順位並びが波形パターンと等しくなるよう配分雨量値を並べ替える(図2(b))。その結果並べ替え後の雨量系列では近い大きさの値が近接して配置されやすくなり、降雨波形がもつ自己相関性が再現できる。
- 最終的に得られる豪雨(図3)はすべて異なる降雨波形をもつため、観測値に類似したものから将来的に起こりうる未経験のものまで幅広いパターンが得られる(図4左)。
- 一連の手法を低平農地の浸水危険度評価に適用すると、水田で発生しうる最大規模の湛水深分布が示される(図4右)。これより将来起こりうる豪雨に対する水田浸水面積・水深の推定、作物の冠水被害予測、被害軽減のための排水施設容量の算定ができる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、ため池(全国21万個)の安全性評価、浸水マップの策定(国土強靭化基本計画、全国約50万haの浸水水田に適用)、また気候変動を想定した農業水利施設の計画・設計・管理基準の検討等に利用できる。
- 雨量強度分布等の豪雨特性の抽出では可能な限り長期間の観測値を使用し、発生データによる再現性を十分確認すること。
- 広域な地区における降雨の空間分布の発生については必要に応じて別途検討のこと。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/nkk14_s03.html
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カテゴリ |
水田
水管理
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