順応的管理に向けた生物相保全機能が低い生態系配慮施設の抽出手順

タイトル 順応的管理に向けた生物相保全機能が低い生態系配慮施設の抽出手順
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2013~2014
研究担当者 渡部恵司
森 淳
小出水規行
竹村武士
発行年度 2014
要約 優先的な改修等が必要な生物相保全機能の低い生態系配慮施設を抽出するため、農業水路の配慮施設の保全機能を、採捕された魚類のデータから計算される種数、総個体数等の5つの指標の「スコア」および「合計スコア」により比較することができる。
キーワード 農業水利施設、生物多様性、生態系配慮、農業農村整備事業、魚類
背景・ねらい 農業農村整備事業の現場において生態系配慮対策は拡がりつつあるが、生物相保全機能が想定通りに発揮されず、機能の低い生態系配慮施設(以下「配慮施設」)も中にはみられる。効果的な生態系配慮対策の実現には、このような配慮施設から改修を行う等の順応的管理の実施が必要であり、この施設の抽出手法の開発が求められている。本手順では、農業水路において保全機能の低い配慮施設を抽出するため、この施設の機能を表す「スコア」および「合計スコア」を算出・比較する。
成果の内容・特徴
  1. 調査・解析は、図1の手順に従って、農業水路において保全対象になることが多い魚類について行う。調査には定置網を用い、採捕された魚類の種と体長を記録する。魚類相に基づいて各配慮施設の保全機能の実態を表す指標には、種数、総個体数、代表的な種の個体数(事例地区では生態系の上位種かつ最頻出種のためギバチPseudobagrus tokiensisを選定)、森下の多様度指数βおよびPielouの均衡性指数J'の5つがある。それぞれの指標のスコアは、最小となる地点の値を0、最大となる値を1として標準化し(1点満点)、レーダーチャートで表す(図2左)。合計スコアは、5指標のスコアを合計することにより求める(5点満点。図2右下)。
  2. 事例地区は、岩手県の国営いさわ南部地区の農業排水路である(図3)。当地区では、農地再編事業(1998~2010年)の際に原川幹線排水路の改修及び原川のバイパス水路として細入川の新設が行われ、同一水路系に複数の配慮施設が施工されている(図4)。調査地点は、配慮施設のある7地点(St.2~8)、従来工法のコンクリート水路2地点(St.1、9)である(図3、4)。
  3. 配慮施設5地点(St.3~7)における合計スコアは1.9~3.6であり、保全機能のレベルが相対的に高いことを示す(図2右下)。これらの地点は水深が多様で、植生が存在するため、魚類にとって好ましい生息場を形成していることが理由の一つと推察される(図4)。一方で、配慮施設2地点(St.2、8)での合計スコアは0.7~1.0であり、従来工法のコンクリート水路2地点(St.1、9)での値(0.4~1.2)と同程度に低い。この結果から、レベルの低い配慮施設としてSt.2、8を抽出できる。配慮施設の改修等を行う場合にはこれらの地点から優先することで、水路系全体の保全機能の効率的な向上に貢献できる。
成果の活用面・留意点
  1. 今後、本手順を抽出手法として確立し、マニュアルを作成することを目指している。これに向けて、事例地区や調査地点数を増やすこと等により、スコアの基準化について検討する必要がある。
  2. 配慮施設の保全機能には、施設の構造だけでなく立地や水質等も影響しうる。
図表1 237164-1.jpg
図表2 237164-2.jpg
図表3 237164-3.jpg
図表4 237164-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2014/nkk14_s08.html
カテゴリ 水管理

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