タイトル |
タマネギ中のケルセチン分析法の室間再現性試験の解析結果 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2011~2014 |
研究担当者 |
渡辺純
石川祐子
室崇人
柳田大介
山岸喬
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発行年度 |
2014 |
要約 |
タマネギ中のケルセチンを塩酸酸性メタノール抽出し、加水分解後にHPLC分析する方法であり、室間再現性試験で妥当性が確認されており信頼性が高い。本分析法により、育成品種「クエルゴールド」は他品種よりもケルセチン含量が多いことを証明できる。
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キーワード |
ケルセチン、タマネギ、妥当性確認、室間再現性試験
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背景・ねらい |
ケルセチンは脂質代謝改善や骨粗鬆症予防など様々な生体調節機能を有することが、ヒトあるいは動物を用いた試験により明らかになっている。タマネギはケルセチン配糖体を多く含み、食事からのケルセチン摂取におけるタマネギの寄与は大きいことから、ケルセチン高含有品種の開発とその上市が望まれている。一方で、タマネギ中のケルセチン量を測定する信頼性が高い分析法は報告されていない。タマネギ試料のケルセチン含有量測定を複数試験室で行った結果を比較し、妥当性の確認されたタマネギ中のケルセチン量の分析法を開発することを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- タマネギ凍結乾燥粉末を測定対象とし、塩酸酸性メタノールを用い、抽出・加水分解した後に高速液体クロマトグラフィーにより総ケルセチンを定量する方法である(図1)。得られる測定値は、ケルセチンアグリコン相当量となる。本分析法の添加回収率はアメリカ化学会ガイドラインの許容範囲内である。均質性を統計的に確認したタマネギ凍結乾燥粉末2種を非明示反復試料として4試験室に配付し、標準作業手順書に従ってケルセチン量の測定を行う室間再現性試験を実施し、分析値をガイドラインに従い統計解析した結果を表に示す。Horwitz 式の修正式で算出される予測室間再現相対標準偏差に対する室間相対標準偏差の比であるHorRat(Horwitz Ratio)が0.5<HorRat≤2の範囲内であったことから、分析法の妥当性が確認され、本分析法は信頼性が高いと判断できる。
- 本分析法は妥当性が確認されており、測定者や測定場所によらず分析値が一定範囲内に収まることが実証されているので、信頼性が高いデータが集積でき、相互比較が可能であることから、作業手順書の公開を通じ、標準化がはかれるものと考えている。
- 北海道地区で栽培されているタマネギ6種の平均的な10球を5球ずつの2群に分け、縮分後、凍結乾燥・粉末化した試料を本分析法で測定した結果を図2に示す。タマネギF1育成品種「クエルゴールド」(出願番号:第28219号)のケルセチン含有量は、一般的な北海道産タマネギ品種よりも高い(図2)。
- 本測定法の普及により、高ケルセチン含有品種の選抜、ケルセチン含有量を高める栽培法の開発や、第三者認証を伴った農産物のケルセチン含有量の表示等を通じ、ケルセチン含有量を指標とした農産物・食品の高付加価値化・ブランド化がはかられる。
- 今回妥当性確認を行った試料はタマネギの乾燥粉末のみであるが、測定原理は他の野菜や食品等に応用可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:大学・地方自治体・企業等で食品分析に携わる全ての研究者・技術者・事業者、およびタマネギ生産組織等
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
- その他:2015年度にタマネギ中のケルセチン分析法に関する標準作業手順書を(独)農研機構食品総合研究所ウェブサイト上に掲載し、ダウンロードを可能にする予定である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2014/14_061.html
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カテゴリ |
乾燥
高付加価値
たまねぎ
品種
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