タイトル |
雇用型法人経営におけるGAP導入による経営改善効果とその要因 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2011~2014 |
研究担当者 |
田口光弘
若林勝史
西村和志
迫田登稔
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発行年度 |
2014 |
要約 |
雇用型法人経営においてGAP導入をより幅広い経営改善に結びつけるためには、管理項目の遵守のみに留まらず、それら管理項目をベースに役割分担や情報共有などをすすめ、従業員が農場運営に関与する仕組みを導入することが重要である。
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キーワード |
GAP、農場生産工程管理、経営改善
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背景・ねらい |
GAP(農業生産工程管理)は、食品安全や労働安全の確保、環境保全を主たる目的とする生産工程管理手法であるが、近年、多数の従業員を雇用する雇用型法人経営においては、経営管理の改善を目的に導入する例が出てきている。そして、GAP導入を契機に従業員の自主性向上等の経営改善が図られた先進事例も散見される。しかし、GAPの導入が経営改善に結びついている実態とその要因は十分解明されていない。そこで、先進的な大規模経営への事例調査により、GAP導入に伴う経営改善効果と、それら効果と関係するGAPの管理項目、および効果を発揮するための取り組み内容について明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- GAPを導入しているA農場、B農場(ともに水田作)、C農場(施設野菜作)における経営改善効果としては、資材の不良在庫の削減、機械の不具合や道具の紛失および資材の不備に伴う作業遅延の解消、従業員の自主性向上、農薬・肥料の使用量減少、機械の修繕費用の減少、労災事故の減少、病虫害による被害の低減、労働時間の削減、10a当たり収量の向上などが挙げられる(表1)。
- こうした経営改善効果は、適合基準に則ってGAPの管理項目を遵守することで直接的に得られる効果(直接的効果)と、適合基準にとらわれず管理項目への取り組み方を工夫することで得られる効果(間接的効果)に分けられる(表2)。
- 直接的効果としては、在庫管理によるムダな資材購入の削減、資材や機械の不備による作業遅延の解消、整理整頓によるモノを探す時間の削減、労災事故の減少などが挙げられる(表2)。
- 間接的効果に共通する要因として、従業員が農場運営に関与する仕組みを導入したことが挙げられる(表2の下線部分)。具体的には、A農場では経験に応じた責任分担と権限移譲を行い、B農場では従業員が参加しての資材や栽培管理に関する勉強会を定期的に開催している。一方、C農場では、GAP導入に伴い収集を開始した作業時間等のデータを従業員も含めて共有することで、作業手順等の改善提案を行っている。このように、GAP導入をより幅広い経営改善に結びつけるためには、それら管理項目をベースに役割分担や情報共有などをすすめ、従業員が農場運営に関与する仕組みを導入することが重要である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、雇用型法人経営が経営管理の改善を目的にGAPを導入する際に活用できる。
- 詳細は、これら3事例以外の経営改善効果とそのための取り組み内容についても紹介した研究成果パンフレット「雇用型経営におけるGAP導入を契機とした経営改善事例」(2015年4月公開予定 http://fmrp.dc.affrc.go.jp/publish/)を参照のこと。
- 本成果で取り上げたGAPの管理項目は、一般財団法人日本GAP協会が策定するJGAPの管理項目に基づいている。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2014/harc14_s11.html
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カテゴリ |
肥料
病害虫
経営管理
栽培技術
水田
大規模経営
農薬
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