タイトル |
取水堰直下流の河床低下を防ぐマット工法の水理設計法 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2013~2015 |
研究担当者 |
常住直人
高木強治
島崎昌彦
吉永育生
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発行年度 |
2015 |
要約 |
マット工法のマット長さを主として下流河床落差から決まる想定最大洗掘深、攪乱時水中安息角での斜面長以上にすれば、下流河床の低下が堰直下に及ぶのを抑止できる。
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キーワード |
取水堰、護床工、下流河床低下、洗掘、洪水
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背景・ねらい |
取水堰築造後、砂利採取、治水掘削等による下流河床の低下が堰付近まで波及している事例が全国で多数見られる。このような堰では洪水時に堰直下が大きく洗掘され被害を受けやすい(図1)。現在、河床低下が波及した堰では、護床工の延長や護床ブロックの追加、大型化、連結化で対応しているが、これらは堰直下の河床低下を遅らせるものの、洪水被害の度に護床改修を要す上、最終的に堰に被害が及び、新設コストに近い改修コストがかかる。本研究では、河床低下に対して堰の長期供用を図るため、より高耐久、低コストの護床工法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 開発したマット工法は、吸い出し防止マットと連結護床を組み合わせ、河床低下波及による堰直下の洗掘や根入れ露出被害を防ぐものである(図2)。
- 本工法の適用範囲は農業取水堰の現地条件を概ね網羅する。その条件は、単位幅当たり洪水ピーク流量30m3s-1m-1以下、洪水ピーク継続時間2日以下、堰高3m以下、河床勾配1/150以下、平均粒径1.9cm以上である。
- 本工法では、上記2の現地条件の範囲で主として下流河床落差から決まる想定最大洗掘深に基付き図2中の式によりマット長さを設計する。連結護床の諸元は通常の護床設計と同様だが、その長さはマット長さ以上とする。
- 本工法は、繰り返しの洪水被災でも堰エプロン直下の河床低下を防げ、洪水被災に対し高い耐久性を持つ(図3)。洪水増水時はマット直下が洗掘されるが堰エプロン直下の河床低下は無く(図3(1))、減水時も最大洗掘点がマット下流端近くに移動するものの堰エプロン直下の河床標高は維持され(図3(2))、再増水時もマットが埋め戻され最大洗掘点が再び下流に戻るだけで(図3(3))、繰り返しの洪水でも堰エプロン直下の河床低下を生じず、パイピングや根入れ露出の堰被害を抑止出来る。また、マット直下へのブロック投入で減水時のマット直下洗掘も抑止出来る(図3(4))。
- 本工法は、通常の連結護床ブロックに、河川護岸で多用されている汎用品の吸い出し防止マットを敷設するだけであり、それにより堰本体被災を防げるので、堰の長期供用コストを抑えられる。
- マット厚さ、連結鋼材径やマット長さに余裕を持たせるほど、マット摩耗、ブロック連結破損や想定外の大洪水での堰被害を防げ、更に耐久性を高められる。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:土地改良区・市町村・県・国の改修工事担当者・堰管理担当者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:設計基準「頭首工」に反映させるとともに、下流河床低下による護床被害が起きている取水堰の災害復旧等に適用が見込まれる(関東平野、濃尾平野など大都市圏平野部以外で全国で130カ所以上)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2015/15_079.html
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カテゴリ |
コスト
低コスト
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