ニンジン葉の揮発性成分組成を変えるエンドファイト

タイトル ニンジン葉の揮発性成分組成を変えるエンドファイト
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2013~2015
研究担当者 田中福代
大脇良成
塔野岡(寺門)純子
松岡宏明
発行年度 2015
要約 野菜から分離した3種類のシュードモナス属ACC分解細菌(エンドファイト)を個別にニンジン種子に接種すると、幼植物の葉の揮発性成分濃度を減少させる効果がある。この現象は(E)-2-ヘキセナールで最も顕著である。
キーワード ACC分解細菌、エンドファイト、エチレン、揮発性成分、GC/MSプロファイリング
背景・ねらい 環境ストレスを受けた作物には硬化やファイトアレキシン・忌避物質の生成などの応答により品質が損なわれる例がみられる。一方、ストレス応答を引き起こす植物ホルモン(エチレン)の直前の前駆体1-アミノシクロプロパンカルボン酸(ACC)の分解能を持つ細菌の接種は作物のストレス緩和に有効とされており、ストレス下の作物の品質低下を軽減する効果が期待できる。しかし、ACC分解細菌の接種効果を品質関連成分の代謝から解析した例はなく、品質低下軽減効果は未知である。そこで、野菜類から分離したACC分解細菌をニンジンに接種し、風味やストレス応答に関連するオキシリピン類とその下流の二次代謝成分に変化が生じるか確認する。
成果の内容・特徴
  1. 接種試験に供した菌株はいずれも市販の野菜から分離したシュードモナス属細菌(OFT2;ニンジン、 OFT5;カブ、 RH7;シシトウ)である。これらは作物切片をACC分解細菌の選択培地に静置し、表皮より内側から発生したコロニーを純化したエンドファイトである。3菌株ともにACC分解酵素(ACCデアミナーゼ)活性を有する(表1)。
  2. この3菌株をリョクトウ種子に個別に接種しACCを含む寒天培地に播種すると、ACCから生じるエチレンによるリョクトウ胚軸の伸長阻害が軽減され、ACC分解能が示される(図1)。
  3. ニンジン(Daucus carota subsp. sativus)「向陽2号」種子に3菌株をそれぞれ接種後、ガラス室内で80日間栽培後、GC/MSを用いたプロファイリングにより、ニンジン葉の揮発性成分を解析すると、ほとんどの成分はACC分解菌接種により減少する傾向があり、GLVs(Green Leaf volatiles、緑の香り成分)とセスキテルペンに属する5成分で有意な接種効果(減少)が認められる(図2)。特に、(E)-2-ヘキセナールの減少は顕著である。
  4. 以上から、ACC分解細菌の接種は、植物におけるストレス抵抗性発現の主流であるオキシリピン経路の化合物GLVsや、下流にあるセスキテルペンの代謝に変動をもたらす。
成果の活用面・留意点
  1. ACC分解細菌接種による揮発性物質の減少は、オキシリピン経路の抑制と推定される。今後,接種菌が揮発性成分の代謝を変化させるメカニズムについて、エチレン発生量やエチレン関連遺伝子の発現と併せて解析する。
  2. GLVsやテルペン類は作物の風味、害虫や天敵の誘引・忌避に関連する物質である。このデータは非ストレス下の結果であり、ストレス応答の緩和や風味、病害虫に対する効果については官能評価やバイオアッセイによる検討を要する。
図表1 237613-1.gif
図表2 237613-2.gif
図表3 237613-3.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2015/narc15_s20.html
カテゴリ 肥料 害虫 香り成分 かぶ ししとう 抵抗性 にんじん 播種

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