タイトル |
消化性に優れるトールフェスク新品種「那系1号」 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
1997~2015 |
研究担当者 |
内山和宏
上山泰史
清多佳子
荒川明
水野和彦
杉田紳一
矢萩久嗣
小松敏憲
廣井清貞
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発行年度 |
2015 |
要約 |
トールフェスク中生品種「那系1号」は、寒冷地から暖地において標準品種「ウシブエ」と同程度の収量性を示す。セルラーゼによる乾物分解率は「ウシブエ」より2.4ポイント、推定TDN(可消化養分総量)含量は1.3ポイント高い。
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キーワード |
トールフェスク、消化性、TDN含量、越夏性、飼料作物育種
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背景・ねらい |
トールフェスクは、主要な寒地型多年生牧草の中では最も越夏性にすぐれるため、西南暖地の中標高地以上の草地における基幹草種となっている。これまで越夏性に優れる品種として、早生の「ナンリョウ」、中生の「ウシブエ」などが育成されてきたが、温暖地・暖地向きの品種では、消化性に特に優れるものはない。飼料の消化性が改良されれば(消化可能な成分量が増加すれば)消化器官内に占める空間が小さく、滞留時間も短くなることにより採食性の向上が期待される。そこで、消化性(乾物分解率)を高め、TDN(可消化養分総量)含量を大幅に改良した品種を育成し、暖地や温暖地を中心に家畜生産性の向上に寄与する。
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成果の内容・特徴 |
- 「那系1号」は、「ナンリョウ」を材料にセルラーゼによる乾物分解率(消化性)に関して、3世代にわたり母系選抜を行って育成した品種である。
- セルラーゼによる乾物分解率は「ウシブエ」より2.4ポイント(表1)、推定TDN含量は1.3ポイント高く、いずれの場所においても「ウシブエ」より高い(図1)。高消化性分画含量(細胞内容物(OCC)と高消化性繊維(Oa)の含量)は「ウシブエ」より高く、中生デタージェント繊維(NDF)含量は低く、粗蛋白(CP)含量は同程度である(表1)。
- セルラーゼによる乾物分解率は「ウシブエ」より2.4ポイント(表1)、推定TDN含量は1.3ポイント高く、いずれの場所においても「ウシブエ」より高い(図1)。高消化性分画含量(細胞内容物(OCC)と高消化性繊維(Oa)の含量)は「ウシブエ」より高く、中生デタージェント繊維(NDF)含量は低く、粗蛋白(CP)含量は同程度である(表1)。
- 年合計乾物収量(利用3年間平均)の「ウシブエ」比は100で、推定TDN収量比は103である(表2)。寒冷地においては、やや収量性が高い(表2)。放牧を想定した多回刈り(年6~7回刈り)条件下での収量の「ウシブエ」比は100である(表2)。
- 越夏直後の乾物収量および越夏後の再生は、「ウシブエ」よりやや劣る(表1)。秋の最終刈りの乾物収量および最終刈り後の基底被度は「ウシブエ」と同程度である(表1)。
- .冠さび病・葉腐病・いもち病抵抗性は「ウシブエ」と同程度で、網斑病抵抗性はやや劣る(表1)。
- 「ウシブエ」以外の他の市販品種および母材となった「ナンリョウ」との比較では、年合計乾物収量において同等かやや優れ、推定TDN含量は高い。寒地向き極晩生品種で消化性・嗜好性に優れる「ホクリョウ」に匹敵する推定TDN含量を示す(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 採草利用を主体に放牧にも利用できる(放牧利用のためには、今後、放牧試験等を行い、適正な利用法を確立することが重要である)。
- 栽培適地は、寒冷地(中標高地以下)~暖地(中標高以上)である(佐賀県では条例により移入規制種として、トールフェスク(オニウシノケグサ)の栽培が禁止されている)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2015/nilgs15_s03.html
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カテゴリ |
育種
いもち病
寒地
くり
飼料作物
新品種
抵抗性
品種
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