多様な主体による傾斜地水田の保全・管理のための農地類型化手法

タイトル 多様な主体による傾斜地水田の保全・管理のための農地類型化手法
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2011~2011
研究担当者 栗田英治
福本昌人
発行年度 2015
要約 傾斜地水田を景観特性と農地基盤条件に関する評価結果にもとづいて一筆ごとに類型化する手法である。類型化結果と耕作管理主体の情報を合わせて用いることにより、NPO等が優先的に引き受けていくべき農地の同定などの検討が可能である。
キーワード 傾斜地水田、景観特性、農地基盤条件、類型化、可視化
背景・ねらい 中山間地域において、農地の耕作を継続し、景観保全などの多面的機能を維持するためには、農地の保全・管理においてNPOや都市住民などの外部の主体の参画が求められる。多様な主体間で今後の農地の保全・管理の方向性に関する話し合いを円滑に進めるためには、農地一筆ごとの特性や基盤条件などの情報を、保全・管理を担う関係者間で共有する必要がある。そこで、傾斜地水田を対象に、視認性などの景観特性と区画規模などの農地基盤条件に関する評価結果にもとづいて一筆ごとに農地を類型化する手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 景観特性の評価は、良好な棚田景観の視認性の観点から、水田区画の傾斜度(立地場所の傾斜)、区画の連担性(隣接する区画群の総筆数)、主要道路からの視認性(幅員3m以上の道路からの俯瞰、視点場からの距離)をもとに行い、農地基盤条件の評価は、圃場での作業性の観点から圃場整備の有無と区画規模をもとに行う(図1)。
  2. 景観特性と農地基盤条件に関するそれぞれの評価結果をもとに、傾斜地水田を景観保全の観点から4つの類型に区分する(図2)。
本手法を用いた傾斜地水田の類型化を、新潟県十日町市松代地区(旧松代町)に立地する水田区画7018筆(2010年度に水稲作付が行われた筆)を対象に行う。類型ごとの筆数は図3に示す。
  1. 類型ごとの耕作管理主体の構成を、各主体の耕作面積と認定農業者に着目して分析すると、農地基盤条件が良好な類型1、類型3では、認定農業者や1ha以上の耕作面積の耕作管理主体が5割以上の区画(筆)を担っているが、類型2の「景観特性:良,農地基盤条件:不良」では、6割強の区画(筆)を耕作面積1ha未満の小規模な耕作管理主体が担っていることが分かる(図3)。
  2. 対象地区では、所有者が耕作困難となった農地を、棚田保全を目的としたNPOが引き受けて耕作している。本手法により作成した評価・類型化結果を用いれば、農家とNPOの担当者の話し合いの場で、NPOが優先的に引き受けていくべき農地の同定など、今後の保全・管理の方向性の検討が可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 評価・類型化の結果は、GISソフトがなくても、PDFのレイヤー表示機能を用いることによって可視化することができ、農家やNPOなどの関係者間で、各評価結果や耕作管理主体などの情報の共有が可能である(図4:Adobe社Acrobat Reader DCをビューアとして使用)。
  2. 景観特性及び農地基盤条件の評価及び類型区分の判定基準については、地域ごとに平均区画規模などを踏まえて設定する必要がある。
図表1 237759-1.gif
図表2 237759-2.gif
図表3 237759-3.gif
図表4 237759-4.gif
図表5 237759-5.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2015/nkk15_s12.html
カテゴリ 傾斜地 水田 中山間地域

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