カロテノイドのルテインは代謝後に脂肪細胞への分化抑制作用を発揮する

タイトル カロテノイドのルテインは代謝後に脂肪細胞への分化抑制作用を発揮する
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 小竹英一
発行年度 2015
要約 ルテインはヒト血中に存在する主要な非プロビタミンAカロテノイドである。ルテインは脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化抑制作用を持たないが、代謝産物の1つである3'-hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneは分化抑制作用を示し、代謝された後に機能を発揮する。
キーワード カロテノイド、ルテイン、代謝、脂肪分化抑制作用
背景・ねらい プロビタミンAからビタミンAへの変換は良く知られているが、非プロビタミンについてはあまり知られていない。そこで、代表的な非プロビタミンAカロテノイドであるルテインの末端環の酵素的代謝変換について検討する。ルテインの代謝産物はヒト血中に相当量存在しており、カロテノイドの示す機能性の一部にはこれらの代謝産物が関与していると考えられる。カロテノイドの代表的な機能性として抗肥満作用が知られていることから、単離・精製したルテイン代謝産物の1つである3'-hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneの3T3-L1前駆脂肪細胞に対する脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化抑制作用を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. ルテイン(β,ε-carotene-3,3'-diol)、ゼアキサンチン(β,β-carotene-3,3'-diol)とその代謝産物3種のヒト血中濃度は表1に示す通りで、通常の食事下でもかなりの量が存在する。
  2. 脂肪細胞は分化が進むほど脂肪球を沢山合成し、これを細胞内部に溜め込むことが知られている。脂肪球の検出には、一般にオイルレッドO染色が行われるが、カロテノイドの赤色と混同されることがある。そこで、ズダンブラックB染色を試みたところ、図1に示したようにオイルレッドOに代替しうる方法として用いることが可能である。
  3. ズダンブラックB染色後に抽出し、細胞のタンパク量当たりのズダンブラックB量として数値化したものを図2に示す。ルテインに分化抑制作用は認められないが、代謝産物3'-hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneでは20 μMで抑制作用が認められる。
  4. 前駆脂肪細胞分化に関わるperoxisome proliferator-activated receptorγ(PPARγ)のウエスタンブロット分析において、代謝産物添加による変化は認められない(図3A)ことから、分化抑制のメカニズムにはPPARγ以外の関与が考えられる。
  5. ルテインの代謝前後の化学構造を図3Bに示す。ルテインは代謝後に特徴的なα,β不飽和カルボニル構造(矢印)を持つようになる。このα,β不飽和カルボニル構造は抗酸化酵素の発現制御に関わるnuclear factor E2-related protein 2を活性化し、heme oxygenase-1(OH-1)の発現を高める。OH-1の発現は分化抑制作用のメカニズムの1つとして知られていることから、本研究の作用にもこのメカニズムの関与が強く推察される。
成果の活用面・留意点
  1. 3'-Hydroxy-ε,ε-caroten-3-oneはマウス肝臓ホモジネートとルテインを反応させて調製する。マウスでは主要な生成物であるのに対し、ヒト血中の組成(表1)はやや異なる。
  2. 酵素の本体が不明であるため、今後は遺伝情報も含めての解明が必要である。
  3. 代謝産物が機能性を発揮するということは、酵素の発現や活性などの個人差がカロテノイドの効果の個人差に繋がる可能性がある。また、カロテノイドをただ闇雲に大量摂取しても摂取量に比例した効果は期待できないと思われることから、酵素遺伝子の発現を高める食品成分探索も機能性発現を増強させるためには重要である。
  4. ズダンブラックB染色はカロテノイド以外でも橙~赤色を呈する食品成分の脂肪細胞への分化抑制作用の評価に適用可能である。
図表1 237781-1.gif
図表2 237781-2.gif
図表3 237781-3.gif
図表4 237781-4.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2015/nfri15_s10.html
カテゴリ 機能性

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