タイトル |
たちすずかWCS給与による適度な脂肪交雑で良質な肉生産のための肉用牛肥育 |
担当機関 |
(国)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2011~2015 |
研究担当者 |
柴田昌宏
曳野泰子
今成麻衣
松本和典
山本直幸
|
発行年度 |
2015 |
要約 |
WCS調製した高糖分飼料イネ「たちすずか」を黒毛和種去勢牛に対して濃厚飼料から代替給与することで、肉質3等級程度の牛肉の生産が可能となり、また、牛肉内のビタミン含量が増加し、保水性の向上が期待できる。
|
キーワード |
肉用牛肥育、肥育・枝肉成績、飼料用イネ、保水性、飼料自給率
|
背景・ねらい |
わが国の肉用牛肥育は、輸入穀物飼料に高度に依存した一部の筋肉では、脂肪含量50%を超える4等級以上の霜降り牛肉の生産が主流となっている。一方、最近の消費者の牛肉に対するニーズは、必ずしも過度の霜降り牛肉のみではなく、健康志向を背景に従来よりも脂肪含量が少ない良質な赤身牛肉への関心が高くなっている。また、人口増加に伴う食糧危機に備え、ヒトの食料と競合する穀物依存の飼養体系からの脱却は重要な課題と考える。地域飼料資源として高糖分飼料用イネ品種「たちすずか」を肥育中期以降、濃厚飼料から一部代替給与し、肉質面で高評価を得ている黒毛和種の品種特性を活かした、肉質3等級程度の肉用牛肥育技術を開発することを目的に肥育・枝肉成績について明らかにする。これにより適度な脂肪交雑の牛肉生産および飼料自給率の向上を図る。
|
成果の内容・特徴 |
- 飼料用イネは黄熟期収穫した「たちすずか」をWCS(T-WCS)として調製し(CP:4.5-6.2%、TDN:57.8-58.3%)、供試牛は16ヵ月齢の黒毛和種去勢牛を用いる。試験区は16ヵ月齢以降、濃厚飼料は25ヵ月齢まで4-5kg/d、続いて28ヵ月齢まで2-3kg/dの制限給与し、この間、T-WCSは飽食とする。T-WCSの増加に伴いCPが不足するため、大豆粕などの飼料原料を補給している。対照区ならびに16ヵ月齢までは、乾草(1.5kg/d)、濃厚飼料を飽食とし、ビタミンAの制御は行っていない。
- 供試牛は、肥育期間で体重、飼料摂取量などの肥育成績を測定し、28ヵ月齢でと畜し、枝肉成績の測定後、腰最長筋(LL)、半腱様筋(ST)を採取し、栄養成分分析、理化学分析に供試する。
- T-WCS切換え後のTDN摂取量(kg/d)は、対照区と比較して減少が認められるが(表1)、肥育終了時の体重ならびに冷屠体重(表2)には有意な差は認められない。TDN換算の飼料効率は、T-WCS切換えの前半で低値、後半で高値となり、これは成長の遅延の可能性を示唆している。一方、飼料自給率は試験区で高値となりT-WCSへの代替給与の効果が示唆される。枝肉成績では、ばら厚およびきめを除き、両区間で影響は認められない。
- 牛肉中の栄養成分は、粗脂肪含量の減少ならびに水分含量の増加が試験区で認められ、ビタミン類では、βカロテンの蓄積ならびにαトコフェロールの蓄積増加が試験区で認められ(表3)、肉質の改善が示唆される。
- 理化学分析の結果、剪断力価が両区間で同等であるため硬さについては影響が認められないが、試験区でドリップロスの減少から、保水性の向上が示唆される (表3)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、濃厚飼料から飼料用イネWCSの切換えによる肉用牛肥育技術の一つとして活用することができるが、目標とする牛肉は肉質3等級程度の適度な脂肪交雑でビタミン類の蓄積が多い牛肉であることに留意する必要がある。
- 飼料用イネWCSの多くはコントラクターなどによる生産であり、その品質は品種、生産地、栽培条件によって異なるため、使用に際しては成分を確認する必要があり、また、肥育期間を通して安定給与できる量を事前に確保する必要がある。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/warc/2015/warc15_s07.html
|
カテゴリ |
コントラクター
栽培条件
飼料効率
飼料用作物
大豆粕
肉牛
ばら
品種
|