対馬暖流域の表層に広がる栄養塩極大の成因

タイトル 対馬暖流域の表層に広がる栄養塩極大の成因
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 日本海区水産研究所
研究期間 2011~2015
研究担当者 児玉武稔
森本晴之
発行年度 2016
要約 日本海南部を流れる対馬暖流域の栄養塩鉛直分布を夏季に隠岐から青森沖まで調べた。観測域全体に、他の日本周辺海域にはない栄養塩極大が20-150 m深で観測された。この極大層は、浅い対馬海峡付近で海底から付加され栄養塩が高濃度になった水が対馬暖流によって運ばれることで生じ、また、運ばれる途中で植物プランクトンに栄養塩が利用され,夏季日本海の生物生産に影響することがわかった。
背景・ねらい 海洋の植物プランクトンによる一次生産は、光と栄養塩濃度によって規定され、特に夏季は栄養塩が一次生産を制限する。つまり、栄養塩濃度の水平・鉛直的な分布の特徴を理解することは、海域の生物生産の特徴を理解する基礎となる。本研究では夏季日本海南部の栄養塩濃度の水平的・鉛直的分布についての特徴と、その特徴の成因を明らかにすることを目的とした。 
成果の内容・特徴 2013、2014年について夏季日本海の対馬暖流域の97点で観測をおこなった。栄養塩の鉛直分布は、他の日本周辺海域には認められない極大層が水深20-150 mに出現した。この栄養塩極大層の水温は15-16°C、密度は25.3-25.5で、塩分の極大層と一致した。この極大層の出現は隠岐周辺海域から青森沖まで約1000 kmにわたって広がっており、夏季対馬暖流域の特徴的な構造と判断された。平均水深が約100 mの対馬海峡では、海底付近で最も塩分が濃くなり、海底付近の水温は日本海の栄養塩極大層の水温とほぼ一致する。また、一般的に、海底付近の水は海底から栄養塩が供給されるためその濃度が高くなることが知られている。以上から、栄養塩極大層は対馬海峡の底層水が対馬暖流によって運ばれて形成されると考えられた。栄養塩極大層は対馬暖流下流域で、その構造が不明瞭になる傾向があり、輸送の過程で栄養塩が植物プランクトンに消費されている可能性が考えられた。栄養塩極大層がない場所では、栄養塩極大があったと考えられる塩分極大において植物プランクトン現存量のピークが形成されることが多かった。これらのことから、栄養塩極大層は夏季日本海の生物生産に植物プランクトンの一次生産を支える栄養塩供給源として強い影響を与えていることが示唆される。 
成果の活用面・留意点 夏季日本海は太平洋クロマグロの産卵場であるなど、その生産性は我が国の水産資源の成長・生残・加入を左右する要因の一つとして考えられる。本研究で日本海の栄養塩動態の特徴を記述したことで、今後、年による変動の解明などを通じて、日本海の海洋環境と日本海を主な生息域とする水産資源の加入や資源量との関連を解明できる可能性がある 
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6096&YEAR=2016
カテゴリ 輸送

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