タイトル | 南極海メロ類2種の生活史仮説 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 国際水産資源研究所 |
研究期間 | 2011~2016 |
研究担当者 |
瀧 憲司 一井太郎 清田雅史 |
発行年度 | 2016 |
要約 | 南極海に生息する高級魚であるライギョダマシとマゼランアイナメの生活史に関して仮説を構築した。前者は海山域と陸棚域間を南北にそれぞれ産卵と摂餌のために大規模な回遊を行うのに対し、後者は主に海山周辺で生活史を完結していると考えられた。本仮説は資源評価に重要な貢献をするとCCAMLRで評価されており、今後は人工衛星標識による回遊調査やDNAによる系群解析などで検証する必要がある。 |
背景・ねらい | 南極海ではマジェランアイナメおよびその近縁種であるライギョダマシの2種類のメロ類が生息し、底延縄漁業の対象となっている。両種は1990年代に横行したIUU漁業による乱獲に晒され、現在は南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)の管理のもとで厳しい漁業規制が設けられており、今後CASAL(統合資源動態モデル)による資源状況の把握が急務とされている。そこで、本研究は、南東大西洋区および南極海インド洋区における2003年以降の漁獲、努力量、標識放流・再捕、肥満度・生殖巣等生物データを解析し、適切な資源管理ユニットの設定に不可欠な両種の生活史に関する仮説を提唱した。 |
成果の内容・特徴 | ライギョダマシでは、未成魚は氷縁陸棚域に出現が限られ、とりわけウェデル海フロントと南極沿岸流の交差する東経50-70度に多く出現する傾向があった。しかし、成長にしたがい沖合の海山域に分布を拡げた。夏季における成熟度合指標は、低緯度ほど高い傾向を示し、南緯65-66度以北の海山域を中心に産卵域が存在する可能性が示唆された。肥満度指標は、高緯度ほど高い傾向を示し、氷縁陸棚域は重要な摂餌域であることが示唆された。したがって、本種は海山域と陸棚域間を南北にそれぞれ産卵と摂餌のため大規模な回遊を行い、南東大西洋区においては生活史がウェデル循環流と密接な関係があると推察された(図1)。一方、マジェランアイナメでは、未成魚は主に海山の浅海域に出現したが、成長にしたがって海山斜面域に移動する傾向を示し、成熟個体は主に海山斜面域に限られた。また、標識放流個体は長期にわたり放流域周辺で再捕される傾向を示し、本種は基本的に海山周辺で生活史を完結していると考えられた(図2)。 |
成果の活用面・留意点 | 本結果は、CCAMLRの魚類資源作業部会で報告され、資源管理ユニットの探索を行ううえで重要な知見を提供したと高い評価が得られた。しかし、ライギョダマシではこれまで標識による海山域と陸棚域間の回遊を示した例は極めて少なく、今後は人工衛星標識やDNAによる系群解析などで検証する必要がある。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=6192&YEAR=2016 |
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