チャの生葉の低温保管による夏茶臭改善効果の解明

タイトル チャの生葉の低温保管による夏茶臭改善効果の解明
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究期間 2013~2015
研究担当者 水上裕造
崎原敏博
内村浩二
遠矢聡志
飛松諒
発行年度 2016
要約 夏茶には硬葉臭と異なる不快な夏茶臭があり、メトキシピラジンが主要因成分である。チャの生葉を低温保管すると、不快な夏茶臭が改善される。これは、生葉の低温保管により香気寄与成分が増加し、夏茶臭をマスクするためである。
キーワード 夏茶臭、低温保管、香気寄与成分、香気エキス希釈分析、GC-O
背景・ねらい 夏茶は夏場に製造され、硬葉臭と異なる不快な夏茶臭がある。これまで、夏場に温度14°Cから19°Cの低温下でチャの生葉を保管すると揮発性成分の発生とともに、不快な夏茶臭が軽減することが明らかにされている。しかし、なぜ夏茶臭が改善されるのか、明らかにされていない。夏茶臭が改善される機構が明らかになれば、低温保管技術の普及が進むともに、夏茶臭の客観的評価が可能になる。そこで、夏茶臭とそれが改善された夏茶の香りをガスクロマトグラフィー匂い嗅ぎ装置(GC-O)を用いた香気エキス希釈分析により解析し、チャの生葉の低温保管による夏茶臭改善効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 香気エキス希釈分析の結果、夏茶臭に寄与する成分は(Z)-1,5-octadien-3-one(金属様)、2-ispropyl-3-methoxypyrazine (2-IPMP)(土臭い)、2-isobutyl-3-methoxypyrazine (2-IBMP)(土臭い)、3-methylnonane-2,4-dione(グリーン)、(E,Z)-2,6-nonadienal(グリーン)、furaneol(甘い)である。
  2. メトキシピラジンである2-IPMPと2-IBMP(図1)の夏茶以外の茶へのFlavor dilution factor(FDファクター)は低い(2014年普及成果情報、2015年研究成果情報)。夏茶に2-IPMPと2-IBMPの混合溶液Aを夏茶に添加すると夏茶臭が強まるため(表1)、夏茶臭の主要因成分はメトキシピラジンである。
  3. チャの生葉の低温保管により、夏茶臭は改善されるがメトキシピラジンである2-IPMPと2-IBMPのFDファクターは変化しない(表1)。
  4. チャの生葉を低温保管すると、linalool(花様)、β-damascenone(甘い)、3-mercapto-1-hexanol(果実様)、(E)-4,5-epoxy-(E)-2-decenal(甘い)、bis (2-methyl-3-furyl) disulfide(肉様)、(Z)-methyljasmonate(花様)、indole(不快臭)のFDファクターが高くなる(表1)。
  5. チャの生葉の低温保管でFDファクターが高くなる上記7成分の混合溶液Bを夏茶に添加する。添加によって夏茶臭が改善されるとともに、フローラルな香調が強まる。以上から、チャの生葉の低温保管により、7成分が増加し、夏茶臭をマスクすることで、夏茶臭が改善される。
成果の活用面・留意点
  1. 香気エキス希釈分析法とは、香気エキスを数段階に希釈してGC-O分析し、匂い嗅ぎ測定者によって感じられる最大の希釈倍率をFDファクターとして求める方法である。FDファクターが高い成分は薄めても感じられることから、匂いの構築に対して寄与度が高い成分と考えられる。
  2. 本研究においては、夏茶臭改善のために、17°C室温下で生葉コンテナ(300K、カワサキ機工)に「やぶきた」の生葉を入れ、最初の1時間は送風量18m3min-1、その後3時間9 m3min-1一定とした後、荒茶を製造する。
  3. 平成25~27年度農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業実用技術開発ステージ(課題番号25061C)「夏茶の付加価値向上のための新たな生葉保管と製茶技術の確立」において得られた成果である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2016/nifts16_s23.html
カテゴリ 保存・貯蔵

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