高分解能質量分析装置によるフモニシン類縁体の検出

タイトル 高分解能質量分析装置によるフモニシン類縁体の検出
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究期間 2013~2016
研究担当者 中川博之
松尾洋輔
久城真代
発行年度 2016
要約 トウモロコシ粉末試料について高速液体クロマトグラフ?高分解能質量分析装置(LC-HRMS)による分析を行い、トウモロコシ汚染主要カビ毒として知られるフモニシンB類の類縁体フモニシンC類の存在を明らかにしている。
キーワード カビ毒、フモニシン、LC-HRMS、トウモロコシ、フザリウム
背景・ねらい フモニシンB群(フモニシンB1、B2及びB3:それぞれFB1、FB2及びFB3と表記)は、フザリウム属菌が産生するカビ毒で、世界中のトウモロコシ及びトウモロコシ加工品から検出されている。ヒトへの影響として、トウモロコシを主食とする地域でフモニシンB群の摂取と胎児の神経管閉鎖障害との関連が報告されており、食道がんとの関連も示唆されている(Chu et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60: 847-852)。わが国では、厚生労働省において食品中のフモニシンB群の実態調査、及び農林水産省において飼料及び飼料原料のフモニシンB群の実態調査等が実施されているが、基準値は設定されていない。また、食品安全委員会は2015年3月に「フモニシン」を自ら食品健康影響評価を行うこととし、かび毒・自然毒等専門調査会で調査審議を行っている。一方、フモニシンB群のアミノ基に隣接するメチル基を欠く類縁体としてフモニシンC群(フモニシンC1、C2及びC3:それぞれFC1、FC2及びFC3と表記)の存在も知られている(図1)が、その毒性や自然汚染に関する情報は殆ど得られていない。そこで、高速液体クロマトグラフ?高分解能質量分析装置(LC-HRMS)を用いてこれらの類縁体に関してトウモロコシなどの穀類粉末中における汚染の有無を調べる。
成果の内容・特徴
  1. フモニシンC群(FC1、FC2、FC3)は市販の試薬標品がないため従来の手法では検出が困難であったが、分子量(組成式)から推定される脱プロトン分子イオンとそれらが開裂して生じる特徴的な断片(フラグメントイオン)の精密質量を指標としてLC-HRMSで分析することで、フモニシンB群(FB1、FB2、FB3)と同様に検出可能である(図2、3)。
  2. フモニシンの毒性発現に関しては、分子内に含まれるアミノ基(-NH2)が寄与するといわれている。フモニシンC群(FC1、FC2、FC3)は分子内にアミノ基を有する(図1)ことから、フモニシンB群(FB1、FB2、FB3)と同様に毒性を有する可能性もある。本成果は、フモニシンB群に汚染された輸入トウモロコシ粉末試料において、FC1、FC2、FC3の同時汚染が起こりうることを示している。
  3. コーデックス委員会では2014年に、食品用のトウモロコシ及びその加工品中のフモニシンB群(FB1及びFB2)の最大基準値を設定し、EU、米国等ではフモニシン(B群)の最大基準値又はガイダンスレベルが設定されている。現在フモニシンC群はリスク評価の対象にされていないが、その存在頻度や汚染濃度によっては勘案される可能性もあることから、FC1、FC2、FC3の共汚染は重要な知見である。
成果の活用面・留意点
  1. 暴露評価や継続的なサーベイランス、モニタリングのための定量的な情報を得るためには、FC1、FC2、FC3の試薬標品(市販品はない)が必要である。
  2. 本成果はトウモロコシ粉末試料についてのものであるが、LC-HRMSを用いた本分析法は他の農作物(野菜・果物等)に含まれるフモニシンC群の探索にも利用可能である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2016/nfri16_s14.html
カテゴリ 加工 とうもろこし モニタリング

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