新規ケルセチン代謝性腸内細菌の分離とケルセチン分解抑制成分の発見

タイトル 新規ケルセチン代謝性腸内細菌の分離とケルセチン分解抑制成分の発見
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究期間 2014~2016
研究担当者 田村基
発行年度 2016
要約 ヒト糞便から、ケルセチン代謝・分解性腸内細菌Strain 19-20を分離する。Strain 19-20とケルセチンの嫌気培養液に種々の機能性成分を添加し、ケルセチン分解を抑制する機能性成分を探索する。レスベラトロールはケルセチン分解抑制成分である。
キーワード ケルセチン、腸内細菌、糞便菌叢、レスベラトロール、Clostridium
背景・ねらい ケルセチンは生活習慣病予防効果が期待される機能性成分である。しかし、腸内菌叢の中には、ケルセチンを代謝・分解する細菌が存在するため、腸内菌叢によってケルセチンの吸収性が低下することが示唆される。腸内菌叢が寿命や肥満に影響を及ぼすことが明らかとなり、食生活と腸内菌叢の動態との関連性の解明は重要課題となっている。腸内細菌の機能の解明は、食品健康機能研究の発展に寄与する。ヒト糞便から、ケルセチン代謝・分解性腸内細菌の分離を試み、分離した腸内細菌のケルセチン代謝・分解性を検討するとともに、ケルセチン代謝・分解性腸内細菌を活用してケルセチンの分解を抑制する機能性成分の同定を試みる。
成果の内容・特徴
  1. 健常人から提供を受けた糞便サンプルを嫌気性培養液で希釈し、この糞便希釈液にケルセチンを添加して37°Cで24時間嫌気培養した後、培養液を希釈し、変法GAM平板培地に接種・培養し、種々のコロニーをケルセチン含有嫌気性培養液で培養し、ケルセチンの代謝・分解性を検討し、ケルセチン分解性Strain 19-20を分離する。
  2. 16S rRNA遺伝子の解析結果からケルセチン高分解性腸内細菌Strain 19-20 (Accession no: LC175305)(1463 bp)は、Clostridium orbiscindens (Accession no: Y18187)と100 %の相同性を有する。(図1)。
  3. ケルセチン(20 mg/mLジメチルスルホキシド) 2 μLを200 μLのStrain 19-20を懸濁した嫌気性培養液に添加して0時間、4時間、24時間嫌気培養する。Strain 19-20は、培養時間の経過に伴いケルセチンを分解し、24時間においてケルセチンのほとんどを代謝分解する(図2)。
  4. ケルセチン(20 mg/mL DMSO (ジメチルスルホキシド)) 1 μLを200 μL のStrain19-20を懸濁した嫌気性培養液に添加して、さらに、2 μLクロロゲン酸(20 mg/mL DMSO)、2 μLゲニステイン(20 mg/mL DMSO)、2 μL ダイゼイン(20 mg/mL DMSO)、2 μL レスベラトロール(20 mg/mL DMSO)、2 μL DMSO (対照サンプル)、のいずれかを添加して24時間嫌気培養を行う。試験した機能性成分のレスベラトロールは、Strain 19-20によるケルセチン分解を抑制する(図3)。レスベラトロールは、ブドウ等に含まれているポリフェノールで、心血管関連疾患の予防効果が期待されている機能性成分である。
成果の活用面・留意点
  1. レスベラトロールが腸内細菌のケルセチンの分解を抑制することから、レスベラトロールとケルセチンの同時摂取では、レスベラトロールがケルセチンの機能性や吸収性を向上させる可能性が示唆される。
  2. Strain 19-20とケルセチンの嫌気培養時に種々の機能性成分を添加してケルセチンの代謝・分解性を検討することで、ケルセチン分解抑制性を有する新規機能性成分を発見することが可能である。新たに見出されたケルセチン分解抑制性を有する機能性成分は、用途発明につながる。
  3. Strain 19-20のケルセチン代謝関連酵素を解析することは、腸内菌叢のケルセチン代謝メカニズムの解明に寄与する。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2016/nfri16_s01.html
カテゴリ 機能性 機能性成分 ぶどう

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