タイトル |
SaCas9,Cpf1を用いた植物におけるゲノム編集系の開発 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 |
研究期間 |
2014~2016 |
研究担当者 |
賀屋秀隆
遠藤亮
三上雅史
遠藤真咲
土岐精一
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発行年度 |
2016 |
要約 |
従来よりも小型のSaCas9、切断末端が突出末端でかつPAM配列がTTNであるCpf1が植物細胞のゲノム編集に活用できることを明らかにした。これによりCRISPR-Casによる作物のゲノム編集の適用範囲が拡大される。
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キーワード |
SaCas9、Cpf1、 突出末端、PAM配列、小型のCas9
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背景・ねらい |
現在ゲノム編集に広く行われているSpCas9はサイズが大きいため、より小型のCas9の開発が望まれている。またこのシステムでは切断部位を規定するPAM配列がNGGに限定されるため、切断可能な部位を増やすために他のPAM配列を認識するシステムも望まれる。更にSpCas9は切断末端の構造が平滑末端であるため、切断部位へのDNA断片の挿入や2箇所の切断によるDNA断片の入れ替えによる配列置換のために突出末端を作る酵素の開発が望まれている。そこで、これらに資する酵素を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- ゲノム編集に広く用いられているStreptococcus pyogenes由来のSpCas9は1368アミノ酸であるがStaphylococcus aureus由来のSaCas9は1053アミノ酸であり、SpCas9より300アミノ酸程小さい(表1)。
- SaCas9による植物ゲノムの標的変異導入を評価したところ、イネおよびタバコにおいてSpCas9と同等の変異導入効率を示し(表2)、しかも目的箇所以外の類似配列への変異導入はない。(発表論文1)。
- Cpf1 はPAM配列、DNA切断様式においてCas9とは異なる特徴を持つ(表1)。SpCas9のPAM配列はNGGであるが、Cpf1はPAM配列としてTTNを認識する。またCas9はPAM配列近傍の標的配列を切断し、平滑末端を生じるが、Cpf1はPAM配列から20塩基ほど離れた標的配列を切断し、5'-突出末端を生じる。
- Cas9とは異なる特徴を持つCpf1が作物の標的変異導入に適用可能かどうかを評価したところ、イネ、タバコにおいて標的変異導入が可能であり、Cpf1による標的配列切断により生じた変異の殆どは欠失である(図1)。Cpf1は植物のゲノム編集に適用可能である(発表論文2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 植物のゲノム編集にウイルスベクターを用いるためには搭載できるサイズに制限があるため、小さいSaCas9はウイルスベクターへの応用に適している。
- Cas9を含む人工制限酵素の使用にあたり、標的配列ではない類似配列の切断が問題になるが、SaCas9はSpCas9より類似配列の切断活性が低く、より精度の高い人工制限酵素として作物のゲノム編集に適用できる。
- Cpf1はCas9とは異なるPAMを認識するため、Cas9が標的にできないTリッチな領域に標的変異を導入することが可能になる。Cas9に加え、Cpf1を利用することができれば標的配列、および変異の多様性拡大が可能となる。
- Cpf1は突出末端を生じることから、その切断部位に相補的付着末端を持つDNA断片の導入が可能になると推測され、より精緻なゲノム編集が可能になると期待される。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2016/nias16_s11.html
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カテゴリ |
たばこ
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