タイトル |
イネいもち病菌のMBI-D剤耐性およびQoI剤耐性簡易同時診断 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター |
研究期間 |
2015~2017 |
研究担当者 |
早野由里子
林敬子
鈴木文彦
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発行年度 |
2017 |
要約 |
マルチプレックス型のPCRマーカー(MDQマーカー)を用い、イネいもち病菌のMBI-D剤およびQoI剤耐性の原因遺伝子であるシタロン脱水酵素遺伝子とチトクロームb遺伝子に起きた点変異を同時検出することにより、短時間で耐性菌を診断する。
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キーワード |
イネ、いもち病菌、QoI剤耐性、MBI-D剤耐性、同時検出
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背景・ねらい |
植物病原菌の薬剤耐性の獲得は、薬剤のターゲット遺伝子の点変異によることが多い。このため、薬剤耐性菌の遺伝子診断では、Polymerase chain reaction(PCR)をベースにした点変異の検出が主流である。イネいもち病菌においては、2001年以降、メラニン合成阻害剤脱水酵素型殺菌剤(MBI-D剤)に加え、ストロビルリン系殺菌剤(QoI剤)に対する耐性菌が出現・蔓延した。現在、これらの耐性菌が全国的に分布していることから、モニタリングなどの耐性菌管理に利用できる迅速かつ安価で高精度な簡易同時診断技術を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 本検出法で使用するMDQマーカーは5種のプライマーセットMDQ-p1~p5から構成され(図1)、伸長反応1秒PCRに用いる。
- プライマーp1およびp2は、核ゲノムにコードされるシタロン脱水酵素遺伝子(SDH)より250bp断片を増幅する(図1および2)。この断片は、野生型・変異型共に増幅されることから、DNA抽出~PCRの一連の手順に問題ないかを確認するためのコントロールとなる。
- プライマーp1およびp3は、MBI-D剤耐性獲得のアミノ酸変異(Val75Met)に関わるSDH遺伝子の223番目の塩基変異(G>A)をターゲットとし(図1)、MBI-D剤耐性菌より98bp断片を増幅する(図2)。
- プライマーp4およびp5は、ミトコンドリアゲノムにコードされ、QoI剤耐性獲得のアミノ酸変異(Gly143Ala)に関わるcytb遺伝子の428番目の塩基変異(G>C)をターゲットとし(図1)、QoI剤耐性菌より173bp断片を増幅する(図2)。
- 所要時間は、泳動時間を含めおおむね2時間である。
- 本検出に用いるDNAは市販キット等により調製されたDNAの他、簡易調製法であるPaper-Disc法(早野ら、2015)による調製DNAも使用できる(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 伸長反応1秒PCR反応の詳細は、2014年度研究成果情報(http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2014/narc14_s26.html)、あるいは、Hayashi et al. (2015) J. Gen. Plant Pathol. 81(2):131-135を参照。
- 所要時間は使用する酵素および機器などにより若干前後する。
- Paper-Disc法の詳細は、2014年度研究成果情報(http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2014/narc14_s25.html)、あるいは、早野ら(2015)日植病報、81(2):141-143を参照。
- 葉いもちの罹病性病斑から直接調製されたDNAからも増幅することを確認している。
- 東北から九州地方の6県で実用性を確認している。
- 現時点で両剤に対する耐性を併せて保有する菌の報告はない。
- 農研機構(2017)「殺菌剤耐性イネいもち病菌対策マニュアル<Qol剤>」(http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/laboratory/narc/073008.html)の改訂版に掲載予定。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/carc/2017/carc17_s16.html
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カテゴリ |
いもち病
診断技術
耐性菌
モニタリング
薬剤
薬剤耐性
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