タイトル |
ムギ類黒節病の多発生の要因となる主要な伝染様式 |
担当機関 |
(国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター |
研究期間 |
2016~2017 |
研究担当者 |
川口章
富岡啓介
竹原利明
谷名光治
吉岡陸人
森充隆
西村文宏
河田和利
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発行年度 |
2017 |
要約 |
ムギ類に深刻な被害を与える黒節病では、採種圃場での種子の病原細菌汚染が次年度の多発生に影響する最大の要因である。圃場での発病推移はコロニー拡大モデルに適合し、播種後に生育した感染茎から病原が隣接する未感染茎へ拡大する傾向が強い。
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キーワード |
ムギ類、黒節病、汚染種子、伝染様式、コロニー拡大モデル
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背景・ねらい |
我が国のムギ類産地で株全体の黄変や不稔、倒伏など深刻な被害をもたらしている黒節病の発生には、種子伝染、土壌伝染等の複数の伝染様式が関与していると言われているが、多発生を招く主要な伝染様式については未だ明らかでない。そこで、病原細菌(Pseudomonas syringae pv. syringae)のDNAフィンガープリントに基づく分子疫学的解析および発病株の分布の推移を時空間分布解析により解明し、本病の的確な防除対策の構築に資する。
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成果の内容・特徴 |
- Box-、Rep-およびGTG5-PCRによるDNAフィンガープリントに基づく分子系統樹により、西日本の主要な黒節病発生地(兵庫県、岡山県および広島県の17地点、4年間)から採集したコムギおよびオオムギ黒節病菌株149菌株は、18の遺伝子型に類別される(図1)。また、供試菌株のうち最も多い46菌株が遺伝子型Aに類別される。
- 代表的な黒節病菌遺伝子型Aの分離頻度に影響を与える要因についてロジスティック回帰分析を行った結果、遺伝子型Aの分離頻度は、分離圃場および分離年度に比べ前年の種子生産圃場により最適な予測がされ(p<0.001)、最も関連性が高い(表1)。これにより前年栽培地での種子汚染が多発生に影響する最大の要因であると推定できる。
- 2016~2017年の発病株の位置情報による空間分析の結果、圃場における黒節病総発病茎数の空間分布の推移は、コロニーの拡大モデル(Taylorモデル)とコロニー数の増加モデル(Iwaoモデル)の両方にあてはまるものの、前者モデルの決定係数の方が高く、より適合する(図2)。本病の多発生時は、播種後の病原の二次伝染過程において、感染茎上の病原が隣接する未感染茎へ順次伝染する傾向が強い。
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成果の活用面・留意点 |
- 黒節病菌に汚染した種子の流通移動に伴う発生地域の拡大が懸念されていることから、特に基幹の種子生産圃場(原原種圃場、原種圃場、採種圃場)では種子消毒を徹底する。また、本病は圃場内で二次伝染することから、立毛で本病を認めた場合は、直ちに登録薬剤を適正に散布することが重要である。
- 圃場の規模、作業性、労力、コスト等を適宜考慮しつつ、種子消毒に加えて雨よけ栽培(原原種圃場のような小面積での栽培に限る)や遅播きなどの耕種的防除法も組み合わせると、より効果的・効率的な黒節病防除が期待できる。
- 黒節病菌の主要な遺伝子型の全国的な分布、各遺伝子型の分布の地域間差、他の遺伝子型の挙動については、今後さらなる調査が必要である。
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2017/warc17_s01.html
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カテゴリ |
病害虫
大麦
コスト
種子消毒
播種
防除
薬剤
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