低温によるウンシュウミカンの花成誘導にアブシジン酸が関与する

タイトル 低温によるウンシュウミカンの花成誘導にアブシジン酸が関与する
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究期間 2013~2017
研究担当者 遠藤朋子
島田武彦
仲田由美
藤井浩
松本光
中嶋直子
生駒吉識
大村三男
発行年度 2017
要約 ウンシュウミカンでは低温によりCiFT遺伝子発現が増加して、花成誘導が起こる。この時、CiFT遺伝子の発現を高める内生アブシジン酸(ABA)含量も増加することから、ABAは花成誘導に関与する。
キーワード 花成誘導、カンキツ、アブシジン酸、低温
背景・ねらい ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)などのカンキツ類では、主に秋冬期の低温や乾燥により葉芽から花芽への転換である花成が誘導される。この過程にはシロイヌナズナのFlowering locus T (FT)遺伝子のカンキツホモログ(CiFT)の発現誘導が重要である。ウンシュウミカンの着花を抑制するジベレリン(GA)処理は、CiFT発現を低下させることが知られるが、CiFT発現を誘導する生理的メカニズムは明らかでない。
このため、ウンシュウミカンの低温によるCiFTの発現誘導を介した花成誘導へのアブシジン酸(ABA)の関与を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 鉢植えのウンシュウミカン(カラタチ台接ぎ木1年生)の新梢が硬化する6月下旬から、15°Cの恒温室で0.5~2ヶ月間栽培し(低温処理)、その後、摘葉し、25°Cの恒温室で発芽を促進すると、1ヶ月以上の低温処理により着花し、以後処理期間が長くなるにつれて着花数が増加する。この時、茎および葉における内生ABA含量が増加する(図1A)。一方、低温処理開始前に全摘葉した場合には、1ヶ月以上の低温処理によっても着花せず、内生ABA含量も増加しない(図1B)。このため、低温処理による内生ABA含量の増加は、花成誘導およびCiFT発現と対応する。
  2. 着葉樹への低温処理効果を、年度を変えて繰り返し確認すると、着花量と葉におけるABA含量との間に相関が認められる(図2)。
  3. ウンシュウミカンの低温による花成誘導時に発現が増加するCiFT3遺伝子のゲノム塩基配列を解析すると、約3kbの5'上流領域には、ABA、GAなどの植物ホルモンや乾燥応答性遺伝子等のシス因子に共通するモチーフ配列が多数存在する(図3A)。
  4. この約3kbの5'上流領域をβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子と結合してシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に導入した形質転換体を、ABAで外生処理すると、GUS遺伝子発現量が増加する(図3B)ことから、ABAはCiFT3遺伝子の上流領域に存在するシス配列に作用しCiFT3遺伝子の発現を正に制御している。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、ウンシュウミカンが低温条件下で合成するABAが、CiFT遺伝子発現を誘導し、そのことにより花成が起こることを示唆しており、カンキツ類の花成制御機構の解明に重要な情報である。
  2. 単離したCiFT3遺伝子ゲノム領域のアクセッション番号は、LC186949である。
  3. 内生ABA含量やその受容シグナルを調節することで、着花量を制御する方法について検討中である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2017/nifts17_s16.html
カテゴリ 温州みかん 乾燥 接ぎ木 その他のかんきつ

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