マウスでの増幅・維持が困難なスクレイピー株が培養細胞を用いて維持できる

タイトル マウスでの増幅・維持が困難なスクレイピー株が培養細胞を用いて維持できる
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究期間 2015~2017
研究担当者 宮澤光太郎
舛甚賢太郎
岡田洋之
牛木(加来)祐子
松浦裕一
横山隆
発行年度 2017
要約 マウス神経細胞株であるGT1-7は、マウスでの増幅・維持が難しいスクレイピー株に対してマウスと同程度の感受性を示す。また、GT1-7はそのスクレイピー株についてマウスを用いるよりも効率的かつ安定的にその生物学的性状を維持することができる。
キーワード スクレイピー、プリオン株の分類、GT1-7細胞、プリオン
背景・ねらい 羊の神経変性疾患であるスクレイピーは、牛海綿状脳症(BSE)や鹿類の慢性消耗病(CWD)などを含むプリオン病の一種であり、その病原体は宿主が持つ正常なプリオン蛋白質(PrPC)の構造が変化した異常型プリオン蛋白質(PrPSc)であると考えられている。スクレイピーには遺伝的背景が均一な動物(主にマウス)に異なる病態を形成する複数の株が存在し、基本的にその性質は同一系統のマウスでは安定して受け継がれる。しかしながら、我が国のスクレイピー羊野外例から分離した潜伏期間の長い株(長期株)は、マウスで連続継代すると病態の全く異なる潜伏期間の短いスクレイピー(短期株)を発症する個体が出現するため、マウスにおける安定的な増幅・維持が難しい(図1B)。一方、我々はマウス神経細胞株であるGT1-7が、長期株の病態(多尿および肥満)を示すマウスから採取した試料を添加した場合のみPrPScを蓄積することを報告している。本研究では、GT1-7を用いてマウスでの増幅・維持が困難な長期株をその生物学的性状を保持したまま安定的に維持できるかを検証する。
成果の内容・特徴
  1. マウスの脳内では短期株の増幅が長期株に比べて圧倒的に早いため、長期株を接種しても脳内で次第に短期株が優勢となり、時には脳内から長期株が完全に駆逐されてしまう(図1B)。
  2. 短期株はマウスで安定的に維持できる(図1C)。
  3. GT1-7は長期株の病態を示すマウスの脳乳剤を添加した時のみPrPScを蓄積する。加えて、連続継代してもPrPScは消失しないため持続感染が成立している(図1A)。
  4. PrPScを蓄積するGT1-7を接種したマウスは全て長期株の病態を示すことから、長期株の生物学的性状はGT1-7においても安定的に維持されている(図1A)。
  5. 長期株の病態を示すマウスの段階希釈脳乳剤をマウスまたはGT1-7に接種すると、どちらも105倍希釈脳乳剤を接種した実験区までPrPScの蓄積が認められる。このことから、長期株に対するGT1-7の感受性はマウスとほぼ同等と考えられる(表)。
成果の活用面・留意点
  1. マウスによる増幅・維持が困難な長期株はGT1-7を用いて生物学的性状を保持したまま効率的かつ安定的に維持できる。
  2. なぜ長期株の病態を示す個体の脳乳剤を接種したマウス群から短期株の病態を示す個体が突然出現するかは未だ明らかではない。GT1-7を使って純化した長期株をマウスで連続継代し、短期株が出現するか否かを検証することにより、短期株が羊に由来するのか、あるいはマウスに伝達した長期株の突然変異によって生じるのかを明らかにすることができる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2017/niah17_s25.html
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